■“毒”によって覚醒した医食同源のスペシャリスト…「密漁海岸」パール・ジャム

 これまでのエピソードではいずれも原作の敵役が登場していたのだが、最新エピソードである第9話「密漁海岸」では、原作『ジョジョ』でもお馴染みのある人気キャラクターが登場している。

 そのキャラクターとは、イタリア料理人であるトニオ・トラサルディ(原作ではトニオ・トラサルディー)だ。卓越した料理の腕前と身に着けた“スタンド”の力で人々を幸福にすることを目指す善人だが、ドラマ版ではイタリアはシチリア出身の俳優、アルフレッド・キアレンザさんが演じたことで、その再現度の高さが話題を呼んだ。

 ドラマのなかには彼が振る舞うイタリア料理の数々も再現されているが、原作で彼が操っていたスタンド「パール・ジャム」は登場せず、トニオが“猛毒”を含む食材を料理に活かす、特殊な経歴を持った料理人であるという設定が付け加えられた。

 また、彼はかつてメキシコでサソリの猛毒を誤って大量に摂取したことで危篤状態に陥ってしまったのだが、これがきっかけで他人の不調を見抜く“才能”が開花し、人々を健康にさせる料理人へと生まれかわったのである。

 いわば、“医食同源”のスペシャリストとして描かれたトニオ。“毒を摂取し快復することで能力を得た”というエピソードは、原作『ジョジョ』における“スタンドを授ける矢”に近しいものもあり、原作ファンも思わずニヤリとしてしまったことだろう。

 キャラクターとしての再現度はもちろん、誰もが一度は“食べてみたい”と思ったイタリア料理と、そのとんでもない効能をどう再現するのか……まさに原作ファン必見のエピソードとなっている。

 

 実写版『岸辺露伴は動かない』は原作の再現度のみならず、“スタンド”を新たな概念として再構築するという試みが見事にハマり、原作ファンも納得の高い評価を受けている。

 随所に散りばめられた小ネタの数々も豊富で、原作を知れば知るほど楽しめる出来となっている点も、実に見事な脚本といわざるをえないだろう。

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