■小ネタを知っていたら楽しさ2倍
市場に出回っている推理作家を冠したアドベンチャーゲームの多くは、原作小説をベースにしたストーリー展開になっている。だが、『山村美沙サスペンス』シリーズはひと味違い、DS版を除く全ての作品が山村美沙さんの「書き下ろし」である。同名の小説は存在しないという、オリジナル性は何よりも魅力的な点だろう。
トリックは多少小説から取り入れているものもあるが、ドラマ・小説と同水準の物語を新たにゲームで楽しめるのは、ファンにとってもかなり嬉しいことだ。
また、『龍の寺』『花の密室殺人』のセーブポイントでもある「カフェ・ド・ミサ」のマダムは、ど派手な衣装とパーマからもわかるように、山村さん本人をモデルにしたキャラになっている。娘の紅葉さんもだが、ちょこちょこと御本人が登場しているのが面白い。
“本人”といえば、同ゲームにはしばしば芸能人をモデルにしたキャラが登場している。たとえば、『龍の寺』の狩矢警部は松方弘樹さん、橋口警部補は草野仁さん、キャサリンの恋人である浜口一郎は田村正和さんにそっくり。登場キャラを当てながらプレイするのも楽しいかもしれない。
ちなみに、狩矢警部は同シリーズで唯一全作に登場するキャラで、ドラマ「狩矢父娘」シリーズでお馴染みのあの狩矢警部だ。
アドベンチャーゲーム『山村美紗サスペンス』シリーズは、どれも山村作品らしいサスペンスになっていて、2時間ドラマを見ているかのような気持ちになれる。ハードや時代の関係でバグも多々あったが、良作ゲームには変わりない。チャンスがあれば一度プレイしてみてはいかがだろうか。