■男女の双子を待ち受ける切ない運命『妖しのセレス』

 最後は、1996年から『少女コミック』で連載されていた渡瀬悠宇氏の漫画『妖しのセレス』を見ていく。同作は「天女」「羽衣伝説」をベースにした壮大な世界観のSFファンタジーサスペンス。2000年にはアニメ化も果たし、話題を集めた。

 双子の主人公・御景妖(みかげあや)と御景明(みかげあき)は、歴史ある大財閥・御景家の一族に生まれた。明は優しく温厚で妹を大切にする良き兄、妖はカラオケ好きで元気いっぱいな女子高生の妹という普通の双子だったが、16歳の誕生日に運命が大きく変わる。

 本家に連れていかれた二人は、御景家に災いをもたらすとされていた天女セレスの手のミイラを見せられると、体に異変をきたして倒れてしまう。そして、その時の反応から妖がセレスの生まれ変わりで、明は御景家の始祖でありセレスの夫である、のちに独裁者となった「ミカギ」の生まれ変わりということが発覚。そして前世の人格に支配され、妖と敵対していく。

 厳密にいえば、同作に登場するのは天女の呪力。天女セレスの生まれ変わりの中でも飛び抜けて強い血を持っていた妖に宿る力は強く、念動力で壁を破壊したり波動を飛ばしたり宙に浮いたりと、凄まじい動きを見せる。

 反対に明は、かつて羽衣を手に入れたミカギの生まれ変わりゆえ、念動力を使う側ではなく彼らを統率する指導者側となった。敵対する運命にある二人の描写は切ないものだったが、妖の持つ力の強さに圧倒されたという読者は多いだろう。

 どの作品の双子も、見た目はそっくりだが中身がしっかり差別化されていてそれぞれに惹かれる要素がある。“入れ替わり”や“同じタイミングでハモる”といった双子あるあるも、見るたびにワクワクしてしまうものだ。

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