■戦争という地獄を自由に泳いだ男「アリー・アル・サーシェス」
最後に『機動戦士ガンダム00』に登場した、アリー・アル・サーシェスを紹介しよう。
傭兵であるサーシェスは自身のことを「戦争屋です。戦争が好きで好きでたまらない、人間のプリミティブな衝動に準じて生きる、最低最悪の人間ですよ。」と説明するほど、闘いを愛したキャラクターだ。
第6話「セブンソード」にて登場した際は、性能差で劣るガンダムエクシアに対して、独自に改良したAEUイナクトカスタムで肉迫するほど確かな実力を持っている。
最終機体であるアルケーガンダムは実体剣とライフルが併用可能なGNバスターソードや10基のGNファング、両つま先のGNビームサーベルなど豊富な武器を備えており、サーシェスの残虐性を形どったようなMSに仕上がっていた。
ロックオン・ストラトスとの最終決戦で激しい格闘戦にもつれ込んだ際、あまりの邪悪さからロックオンに「なんなんだ貴様は!!」と問われると、「俺は俺だぁ!!」と喜々とした表情で答えた。
誰しもが戦争のない平和な世界を望むなかで、サーシェスのような存在は多くの人の目には異質に映ってしまうだろう。しかし、サーシェスにとっては闘いこそが生きがいであり快楽の源であったことから、自身の全てが集約されたこの一言が答えとなるのは当然だったように思えてしまう。
数ある『ガンダム』シリーズのなかでも屈指の邪悪さを持った、まさしく闘争に魅せられたキャラクターであると言えるだろう。
戦争という重々しい空気感が漂うなか、高らかな笑い声とともに闘いを楽しむキャラクターたち。時にその残虐さに目を覆いたくもなるが、彼らが戦場にもたらす混乱があってこそ、より一層その世界観に引き込まれてしまうのも事実である。
こうしたキャラは総じてやられ役として幕を引くことが多いのだが、彼らが視聴者に与えてくれる痛快さは決して色褪せることなく、これからも語り継がれていくのだろう。