昭和のアニメは怖かった。感受性豊かな子どものころに見たので一層怖く感じたのかもしれないとも思うが、実際は大人になって見ても十分怖いのだ。
妖怪や悪魔が主人公の作品に、人間の愚かさを伝えるような不条理なストーリー、さらには昭和独特の絵のタッチと音楽、さまざまな要素が、昭和アニメの怖さを引き立たせている。
そこで今回は、40代・50代が幼少期に見て怖かった昭和アニメのトラウマ描写を紹介していく。令和の子どもたちが今見ても、きっと泣いてしまうのではないだろうか……。
■原作の雰囲気を多く残した『ゲゲゲの鬼太郎(2期)』
水木しげるさん原作の『ゲゲゲの鬼太郎』。令和にも放送され現在までに全6シリーズが作られている超人気作品であるが、とくに1971年(昭和46年)に放送された2期は、原作の雰囲気を色濃く残した非常に怖いシリーズだった。
なかでも第43話「足跡の怪」は、恐ろしいトラウマ回として有名だ。
ある農村の守護石を叩き割って持ち帰った中村と山田、この罰当たりな2人は案の定、山の神・タイタン坊の怒りを買ってしまう。まず山田の小指がなくなり、耳や目や鼻も次々と消失していく。さらには首なし状態になって走り出し、ついには体ごとなくなってしまう。最後に残ったのは、血のような赤い足跡だけだったという描写……。非常に怖い。
さらに話は続く。欲に目がくらみ「タイタン坊に石を返したらいい」という鬼太郎の忠告にも、聞く耳を持たない中村。ニトログリセリンを片手に鬼太郎を脅し始めるも、結局祟りによって体がドロドロに溶け、苦しみながら深い穴に転落し生死不明となってしまう。
守護石という特別なものだったとはいえ、石自体は身の回りのどこにでもあるものだ。それが子どものころの筆者には非常にリアルで恐ろしく思えた。そして、ドロドロと人が溶けていく描写は、今見ても十分ショッキングなものだった。
■恐ろしすぎるオープニング『妖怪人間ベム』
1968年(昭和43年)放送の『妖怪人間ベム』は、人間になることを願う妖怪人間3人の戦いや哀しみを描いた昭和の名作アニメだ。
さまざまなエピソードがある本作だが、なんといっても怖かったのがオープニングだ。
「それはいつ生まれたのか誰も知らない」というおどろおどろしいナレーションではじまり、月明かりの暗い研究所、ボコボコと泡が弾ける培養液の中で細胞が分裂してベムたち妖怪人間3人が雄叫びを上げながら誕生するシーン……。とてつもなく不気味に感じたことを覚えている。
主人公である3人のビジュアルも独特で、かなりのインパクトだった。人間社会で暮らすために普段は人の姿を模しているが、スーツを着た浅黒い大男のベム、紫のローブを着た厚化粧の女のベラ、赤い全身タイツのギョロっとした瞳の少年のベロと、人間とは微妙に違い不気味に感じた。
また、戦闘時の3人の姿は、正義のために戦っていると分かっていても、非常に恐ろしいものがあった。妖怪らしい姿をここぞとばかりに発揮しており、夜、思い出して眠れなくなった子どももいたのではないかと思う。