1946年に『夕刊フクニチ』で連載がスタートした、長谷川町子さんの漫画『サザエさん』。1969年からはフジテレビ系列でアニメがスタートし、今なお老若男女問わずたくさんの人々に愛されている国民的作品となった。
サザエさん一家は、波平・フネ夫婦、その子どもであるサザエ、ワカメ、カツオのきょうだい、さらにサザエの夫であるマスオと息子・タラオ、猫のタマという3世代同居の大家族。それぞれのキャラに個性があって面白いのだが、中でも意外な行動で視聴者を驚かせ、笑わせてくれるのがマスオさんだ。
マスオさんは多趣味で、いろいろなことに手を出しては珍騒動を起こす。最近では、麻雀にハマったマスオさんが麻雀依存症になってしまうエピソードが放送され、話題を集めた。そこで今回は、マスオさんの趣味が原因で起こった珍騒動を振り返ってみよう。
■音楽愛は深いが「バイオリン」の腕前は…
マスオの趣味で有名なものが、バイオリンだろう。普段は音楽と無縁のイメージだが、実はマイバイオリンを持っていて、作中でもたびたび描かれている。しかしこれがとんでもなく下手で、音楽というよりもはや雑音。ノコギリを切る音に聞こえるほど音程を保っておらず、家族もみな耳を塞いでしまうのだ。
作品No.8326 「マスオ、夢見るバイオリン」では、そんな下手さから珍騒動が起こった。このときマスオは、街中で聞いたバイオリニストの演奏に感化され、眠っていたバイオリンを引っ張り出して練習を始める。
だが、あまりの音の酷さに、サザエらは「近所迷惑になる」「勉強の邪魔になっちゃうから」など何かと理由をつけて演奏を止めた。面白いことに当の本人はそこそこうまいと思っているようで、全く違和感を感じていない。
家族に止められたマスオは、バイオリン教室に入会してグループレッスンを始めた。しかしある日、先生から個人レッスンを促される。腕を見込まれて別クラスになったのかと喜ぶが、実はあまりの異音にメンバーからクレームが入ってしまったのだった。
「下手だから」と言えずにオブラートに包みながらマスオを止める家族と、謎の自信に満ちたマスオさんのギャップが面白いエピソードだった。
■「推理小説」はネタバレを絶対に許さない派
マスオは、読書も好きである。音楽と読書なんて、何と優雅な趣味だろうか。作品No.7999「マスオは本の虫」では、一日中部屋に籠って本を読みふけり、サザエから「ああいう人を本の虫っていうのよ」なんて言われている。
それを聞いたタラちゃんらに、本を読むたびに「虫がいる」とからかわれてしまったが、このエピソードでの彼は確かにちょっとハマりすぎていた。
ある夜マスオは、仕事帰りに歩きながら推理小説を読んでいた。夜歩きながら読書という時点でヤバイのだが、家に入る直前で犯人を思いつき、その場で本格的に読書を始めてしまう。帰宅した波平がその姿を見て「家の前に変質者がいる」と家族に伝え、大騒ぎとなるのだった。
作品No.7840「イクラの足あと」では、さらに衝撃の姿を見せる。この日、マスオはカツオが借りてきた推理小説をサザエ経由で入手し、夢中になって読んでいた。
夜中、波平とフネが物音で目覚めると、何やらサザエの寝室からガサゴソ音が聞こえる。恐る恐る覗くと、そこにはロープで手足を縛られ口を塞がれたサザエと暗がりで本を読むマスオの姿が。驚く夫妻に彼は、「だって、推理小説の結末を喋っちゃうんです」と困り顔で答えるのだった。怖さすら感じるこのマスオの行動に、衝撃を受けた視聴者は多いだろう。