■禰󠄀豆子の笑顔を照らした朝の光

 また、アニメ前期となる『刀鍛冶の里編』のラストでは、炭治郎の妹・禰󠄀豆子が太陽の光で消滅してしまうのではと視聴者をハラハラさせる展開があった。

 朝日の昇る直前、逃亡する上弦の肆・半天狗を目の前にして、炭治郎は一般人を助けるべきか、禰󠄀豆子を日の光から守るべきか判断に悩んでしまう。そこで禰󠄀豆子は、体が焼かれる苦しみを味わいながらも自らの命を顧みず、炭治郎を蹴って笑顔で送り出した。

 戦闘後、禰󠄀豆子を犠牲にしてしまったことに涙する炭治郎。視聴者も、禰󠄀豆子がもう消滅しているかもしれないと思うと、これまでは希望の象徴であった太陽の光にも言い知れない絶望を感じたことだろう。

 しかし、禰󠄀豆子は生きており、炭治郎の前で笑顔で「おはよう」と口にした。その姿はまさに奇跡そのもののようで、禰󠄀豆子の顔には朝日が反射していた。

 炭治郎にとって一番大切な存在をようやく太陽の光の下で抱きしめられた瞬間に、涙を流さずにはいられなかった視聴者も多いのではないだろうか。

 これからも『鬼滅の刃』では朝日の輝きが心に刺さるシーンが多く描かれることだろう。このアニメで描かれる「朝」は、他のどの作品のものよりも深い意味を持ち、尊いもののように感じるはずだ。

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