■愛した人は虹の天女『虹の嫁』
『虹の嫁』は、長年相手を思い続けたあげく結ばれたロマンチックな話である。
昔あるところに、やたみという木こりの若者がいた。ある日やたみは、美しい虹とともに舞い降りた天女に一目惚れをする。そして結婚を申し込むものの、地上の人間とは結婚できないと断られてしまった。
あきらめきれないやたみに対し、天女は‘‘いつか私は地上の人に生まれ変わるので、目の下の青いホクロのある女性を探してください”と言い残し、去っていく。
それから15年もの月日が流れ、真っ黒な顔のななえという女の子が山の手伝いとしてやってきた。黒い顔はいじわるな継母によって塗りこまれた炭だという。かわいそうに思ったやたみがななえの顔を丁寧に拭くと美しい顔に戻り、なんと目の下に青いホクロが現れた。やたみは、ななえが天女の生まれ変わりだと気付き、ななえも当時を思い出す。そして2人は感動の再会を喜び結ばれたというお話だ。
やたみが天女のことを一途に想い、15年ものあいだ目の下にほくろのある女性を探し続けたのは感動的だ。また、ななえはその見た目のせいで周囲に嫌がられていたものの、やたみは彼女の面倒を率先して引き受けた。
もしやたみに優しさがなければ、2人が巡り合うことはなかっただろう。『虹の嫁』はロマンチックなラブストーリーかつ、人にやさしく実直に生きることの大切さも説いている昔話だ。
好きになった相手は実は人間じゃなかった……。そのような展開は現在のドラマや漫画などでも多く、実は動物だったり異世界の人だったり話も多い。
キュンとする恋はもはや人間だけにとどまらない。『まんが日本昔ばなし』はそのようなラブストーリーの先駆けとも言えそうだ。