■パンドラボックスの光により野心的に『仮面ライダービルド』仮面ライダーローグ・氷室幻徳
最後は2017年放送の『仮面ライダービルド』から、愛すべき闇落ちライダーを紹介する。
本作は「東都・西都・北都」の3つに分かれ勢力争いをしている日本が舞台である。東都政府首相である氷室泰山の息子・氷室幻徳は、本来は家族思いの優しい性格で茶目っ気たっぷりの憎めないやつだった。
しかし、“スカイウォールの惨劇”でパンドラボックスの光を浴びたことにより、野心的で好戦的な性格となってしまう。東都政府の首相補佐官という肩書の裏で、秘密結社・ファウストの幹部・ナイトローグとして活動し始めるのだ。北都との戦争が始まった第2章では、東都軍の総司令官の立場で戦争への道を突き進んでしまう。
仮面ライダービルドに敗れて東都を追放されたのち、第23話「西のファントム」で、西都の仮面ライダーローグとして復活を遂げた幻徳。
“クロコダイル”モチーフの非常に強力でクールなライダーであるうえ、自身もボロボロの黒いコートを纏って、髪や髭を伸ばしており、以前よりも渋さが増していた。
仮面ライダーローグとして幻徳は大暴れするのだが、実はこのとき彼はパンドラボックスの光から解放され、本来の優しい性格に戻っていた。しかしあえて自分が汚れ役になることで、父・泰山に国を託そうとしていたのである。
しかしその泰山も殺され、国を建て直す為に仮面ライダービルドらと手を組むことに ……そしてここから本来の幻徳があらわとなった。「親しみやすさ」「威風堂々」などプリントされたTシャツを好むなど服装のセンスは壊滅的で、放送当時はこのあまりの突然なキャラ路線の変更に困惑した視聴者も多かったようだ。しかしそのギャップで非常に愛されたのも事実だ。
最終回目前の第48話「ラブ&ピースの世界へ」。エボルトとの最終決戦では人々の声援を力に変え、エボルトリガーを破壊しエボルト攻略の突破口を作り、最期は正義の仮面ライダーとして勇敢に散っていった。
今回は、闇堕ち仮面ライダーを3人紹介してきた。それぞれ悪の道を突き進んでしまった彼らであったが単純に憎めず、正義の仮面ライダーにはないダークヒーローゆえの魅力があった。
そして彼らの最期は、さらなる闇に堕ち死んだ者、正義の道に戻った者、正義に戻ったが想いを託し散った者とどれもが印象的なものであり、三者三様愛すべき闇堕ちライダーだった。