■『ちびまる子ちゃん』作中屈指の“泣ける話”に登場した「たかし君」
1986年に連載がはじまった、さくらももこさんによる『ちびまる子ちゃん』。小学3年生のさくらさん自身を投影した主人公・まる子を中心に、学校生活や2世帯が同居する賑やかな家族との日常が描かれたコメディ漫画だ。今年で放送開始から34年目を迎えたアニメは、今もなお“日曜夕方の顔”として人気を博している。
そんな本作では実に個性的なキャラクターが多く登場しているが、なかでもまる子のクラスメイトの「たかし君」を最後に紹介したい。
早起きが苦手で遅刻をしがちなたかし君は、関口君や佐々木君からいつもいじめられていた。たかし君はお母さんに“早起きをする”という約束をして子犬を飼いはじめ、それをきっかけに遅刻が少なくなるも、今度は牛乳を残したことを二人に責められたうえ、お母さんの手製の給食袋を踏みつけられるなど相変わらずひどくいじめられてしまう。
そんな様子を見かねて止めに入ったまる子だったが、このとき関口君に突き飛ばされてしまい、頭から流血。するとまる子は自分のケガの心配よりも「どうしよう 学校でぶたれてケガしたなんて言ったら……おかあさん泣いちゃうよ」と、涙を流すのであった。
これは、たかし君がいじめられていることを家族に話したとき、おじいちゃんをはじめ、お母さんまでが“まる子がぶたれたりしたら、泣いちゃう”と言っていたことを受けてのこと。
普段はギャグ中心で明るいエピソードが多い『ちびまる子ちゃん』だが、この回は家族愛を感じられる作中屈指の“泣ける話”としてファンのあいだで認知度が高い。
いつもはおちゃらけてばかりのまる子がたかし君のことを本気で心配している様子は、小学校3年生という年代の子どもの葛藤や成長の様子を垣間見ることができるように思う。
モブキャラであるが、作品に大きな彩りを加えたたかし君だった。
少女漫画に限ったことではないが、登場回は少ないものの、読者に大きく印象を与えるキャラクターは多く存在する。
“モブキャラ”と言われる彼らだが、作中ではヒロインの心情やその後の展開に大きな影響を与えることもあり、その作品を知るうえで重要なピースのひとつでもあると言えるだろう。