織田裕二さんが主人公・青島俊作を演じた1997年放送の刑事ドラマ『踊る大捜査線』(フジテレビ系)の新作映画が、2024年秋に公開されることが決定。12年ぶりとなる『踊る』シリーズの復活に期待の声が集まっている。
今回の新作では、2005年に公開されたスピンオフ映画『容疑者 室井慎次』に続き、柳葉敏郎さん演じる室井慎次が主人公となる。3月18日に公開されたティーザー映像では、貫禄が増した室井の姿とともに、「あなたはまだ、室井慎次の全てを知らない。」というミステリアスな文章が強調され、ファンの好奇心を掻き立てている。
今回の新作、そして『容疑者 室井慎次』以外にも、テレビドラマのヒットを受け、青島以外のキャラクターを主人公としたスピンオフ作品が多数作られている。すべてを網羅している視聴者はコアなファンといえるだろう。そこで今回は、どのような『踊る』スピンオフ作品が作られてきたか、振り返っていきたい。
■婦警が主役となった『湾岸署婦警物語 初夏の交通安全スペシャル』
同シリーズ初のスピンオフ作品となったのは、テレビドラマ最終回後、1998年6月に放送されたスペシャルドラマ第2弾『踊る大捜査線 番外編 湾岸署婦警物語 初夏の交通安全スペシャル』。主人公は、内田有紀さんが演じた新人警官・篠原夏美で、コメディ要素が多く、初期の『踊る』らしさが強い作品だ。
篠原は警部だった父に憧れを抱く正義感の強い女性で、「女版青島」と呼ばれていた。そんな篠原の指導役が、勝どき署交通課から出向してきた渡辺えり子(現:渡辺えり)さん演じるお局巡査部長・桑野冴子。篠原は新人ゆえにミスが多く、桑野にこってり絞られていたが、試練を乗り越えながら成長を遂げていく。
篠原はその後、2010年の映画『踊る大捜査線THE MOVIE 3 ヤツらを解放せよ!』で、警視庁湾岸警察署刑事課強行犯係巡査部長という肩書で、青島の部下として本編に初登場する。12年の月日を経て、新人婦警から巡査部長に成長するとは、ファンも胸アツの展開だ。
■スリーアミーゴスが主役のミニドラマ
シリアスな展開の一方でコメディ的な要素も欠かせない『踊る』シリーズ。
続いては、湾岸署署長・神田総一朗(北村総一朗さん)、副署長・秋山晴海(斉藤暁さん)、刑事課長・袴田健吾(小野武彦さん)からなる「スリーアミーゴス」が主人公のミニドラマ『深夜も踊る大捜査線 湾岸署史上最悪の3人!』を見ていこう。
彼らは、自己保身が最優先だが、いざという時には身を張って部下を守るナイスな上司たち。そんな彼らの日常生活をコミカルに描いた同作は、映画の番宣として作られた10〜15分の深夜ドラマだ。これまでに、映画公開のタイミングに合わせて3本の『深夜も踊る』シリーズが放送されている。
2012年には『深夜も踊る大捜査線 THE FINAL』と題したミニドラマも制作されたが、本作では主人公が特殊捜査係、爆弾処理班および特殊部隊のメンバーである木島丈一郎(寺島進さん)、眉田克重(松重豊さん)、草壁中(高杉亘さん)に変わっていた。これまでの『踊る』シリーズをスピンオフまで見ているコアな視聴者には、こちらもグッとくるキャスト陣である。
さらにコアなスピンオフでは、1998年に『意地悪ばあさん』へのゲスト出演という形で、『意地悪ばあさんリターンズ 伝説のばあさんVS湾岸署スリーアミーゴス意地悪バトル』というスペシャルドラマも放送されている。
■人気キャラ真下正義・室井慎次は劇場版スピンオフで主役に
2005年からは『踊るレジェンド』として、青島以外の人物を主人公にした外伝作品が作られている。
同年5月に公開されたのは、警視庁初の交渉人になった真下正義(ユースケ・サンタマリアさん)が主人公の映画『交渉人 真下正義』。2003年の映画『踊る大捜査線THE MOVIE 2 レインボーブリッジを封鎖せよ!』の一年後の物語だ。
東京の地下鉄を走る最新鋭実験車両がジャックされ、犯人から交渉相手に指名された真下が、FBI仕込みのプロファイリングを駆使して犯人を追い詰めていくというストーリーで、本編ではまだまだポンコツ感のあった真下が、話術を使って犯人を追及する頼もしい姿を見せている。
8月には、その数か月後の事件を描いた『容疑者 室井慎次』が公開された。昇進・降格で肩書が変わる室井だが、同作では警視庁刑事部捜査第一課管理官警視正である。
室井は新宿殺人事件の捜査本部長として指揮を執っていたが、ある日被疑者だった警察官が取り調べ中に脱走し死亡してしまう。真犯人が他にいると読んだ室井は捜査を続けるが、警察に不信感を持つやり手弁護士・灰島秀樹(八嶋智人さん)に告訴され、逮捕されてしまうのであった。
真相を暴こうとする室井と彼を助けようとする仲間、あの手この手で室井を陥れようとする灰島、派閥争いで揉める警察庁と警視庁など、様々な要因が絡み合いながら展開していくという、『踊る』の中でもきってのシリアスな物語となっていた。