■『ハイキュー!!』木下と西谷のWガッツポーズ

 最後は、古舘春一さんによる『ハイキュー!!』(集英社)の春高バレーでの烏野高校と稲荷崎高校の試合のシーンから。烏野の2年生・木下久志は、これまでほとんど試合に出られなかったが、だからといって決して腐りはしなかった。

 彼は練習を怠ることなく、来たる自分の出番のためにずっと備えていたのだ。そして、待望となった出番はピンチサーバーとしてである。3年生のためにも結果を残さなくては……そう思っていた彼だったが、大した活躍はできずに下がってしまう。これには本人も悔しさしかなかった。

 それから敵サーバーが宮侑に変わったため、かなり厳しい状況となる。宮侑のサーブには、木下と同じ2年の西谷夕が苦しめられてきたからだ。これまでと同じような状態なら何点も決められてしまう……。そう思った木下は、外から西谷の姿勢を見て「西谷 前ッ」と叫んだ。

 それによって西谷は宮侑のサーブに反応してオーバーで取ることができ、得点につながった。これは木下が西谷のサーブ対応の練習にずっと付き合ってきたからの結果である。

 味方につなげて得点が決まった瞬間、西谷は木下に向けてガッツポーズをして、木下も同じくガッツポーズで返していた。いろんな想いがここに集約されているからこそ、感動的な名シーンでもある。

 

 ガッツポーズは、素直な感情の爆発を形にしたものだ。努力が報われた瞬間や勝利に対する喜び……。そこに至るまでの道のりを知っているからこそ、感動もひとしおである。

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