3月1日に発表された「TVerアワード2023ドラマ大賞」に『あなたがしてくれなくても』が選ばれた。本作はハルノ晴氏による同名コミック(双葉社刊)が原作の、夫婦のセックスレスをテーマに描いた作品である。
これまで“レス”に関する漫画は多くあったが、通称『あなして』は実写ドラマ化されたことでおおいに注目され、話題となった。放送後にはSNSを中心に大きな反響があり、同じような悩みを抱えている人からも賞賛を得ていた。
そんな本作では、さまざまな立場のキャラクターから心に刺さる印象的なセリフが発せられるのも見どころのひとつ。ここでは、ドラマ内でとくに印象に残ったセリフを紹介したい。
■「教えてください、どうしたら色気って出ますかね…」
まずは第1話より、夫とのレスに悩む主人公の吉野みちが、酔った勢いで上司の新名誠に相談したときのセリフを紹介したい。
みちは結婚して5年になる夫・陽一と2人暮らし。セックスレスになって早2年が経ち、自分に魅力がないのかと悩んでいた。可愛いそぶりをしたり、派手な下着を買ったりするものの、やはり陽一にその気はない。
そんな時、ひょんなことから上司の新名と桜を見ながらお酒を飲むことになったみち。お酒が進み、勢いでセックスレスの話を椎名にしてしまう。その直後、泣きそうな顔で「教えてください、どうしたら色気って出ますかね」と、みちは問うのであった。
レス問題というと、一昔前であれば女性が拒むことで起こるイメージがあったように思う。しかし近年ではその反対のケースも多く、人知れず“自分に色気や魅力がないのでは……”と悩んでしまう女性も多いと聞く。
椎名はその場では適切な回答はせず、「お腹すきませんか、ラーメン食べに行きましょう」と、みちを励ます。帰宅後、みちは「ずっと誰にも言えなかったことを誰かに言えたことで、少しだけ心が軽くなった」と思うのであった。
レス問題に関してはカップルごとに要因も違うため、明確なアドバイスをできる人はいないだろう。しかし今回のみちのように、誰かに自分の悩みを聞いてもらうだけでも、気持ちは少し軽くなるのかもしれない。
■「優しくされればされるほど、思い知らされる。私が誠にしていること」
続いて第3話より、新名の妻・楓が自問自答するシーンのセリフを紹介したい。
新名誠・楓夫妻もまた、セックスレスに悩む夫婦。こちらはみち夫婦とは違い、楓が拒んでいるケースだ。楓は編集部で忙しく働くキャリアウーマンで、常に疲れていて余裕がない。この回では誠と素敵な結婚記念日を送るはずだったが仕事で遅れてしまい、その夜、誠からのアプローチも拒んでしまう。
そんな楓に対し、誠はショックを受けながらも優しく接する。残業で楓が遅いときは夕飯を作り“冷蔵庫に入っているよ温めて食べてね”というメッセージを残してくれる誠。そのボードを見ながら楓は「優しくされればされるほど、思い知らされる。私が誠にしていること」と、自分が拒んでいる現状を顧みるのであった。
レス問題は拒む相手が非難されがちだが、拒む側にもそれぞれ事情がある。この回のオープニングで楓は“今 子どもができたら私の積み上げてきたものがすべてなくなる”、“今の私にとってセックスはただの疲れる性行為”とも回想しており、少なくとも現時点では、夫婦関係よりも優先したいものがあることがわかる。
相手の要望に応えたくても、どうしてもそれができない時期はあるだろう。とくに女性の場合は子どもを持つタイミングとキャリアとの関係に悩むこともあり、夫婦関係はそう簡単には解決できないものだと思う。