■嫉妬満載!? 思わずニヤついてしまうページばかり

『伝染るんです。』には多くのシュールなギャグが登場するが、なかでも印象的なのが“嫉妬心”を描いていることだろう。とくに有名なのが、ハワイに行ったことがないかわうそ君が、ハワイに行ったことのあるかっぱ君に激しく嫉妬する場面だ。

 1巻終盤、かっぱ君がGWにハワイに行った経験があると知ったかわうそ君。それ以来かわうそ君はかっぱ君と口を聞かなくなったり、英会話教室にさえ怒りを持ったりする。

 そして、その嫉妬心は長期に渡って続いていく。2巻になってもかわうそ君は、「ホノルル」というパブの前に“やっとこ”というペンチのような凶器を持って立ちすくんでいたりもする。

 思えば本作の連載当時はバブル経済の末期であり、ハワイに行くことが一種のステータスのような雰囲気もあった。そんなハワイに一度も行けていないかわうそ君の狂気じみた嫉妬心は、怖いながらもユニークだ。

 このほかにも、頭に包帯を巻いた少年がエスカレーターに乗っているとき、前にいるいちゃつくカップルに対し「日本でも拳銃の携帯を 許せばいいのになあ」と、ぼそっと一言つぶやくシュールなシーンが登場したりもする。

 このように『伝染るんです。』には、誰もが持つであろう嫉妬心が前面に出てくるシーンも多い。もの悲しさを感じつつも、どこか憎めない雰囲気があるのだ。

 

「不条理ギャグ漫画」と呼ばれた『伝染るんです。』は、コミックではいきなり空白のページが登場したり、あとがき文章が途中で切れていたりと、不条理っぷりがとことん徹底されている。

 ちなみに平成初期に一世を風靡した『伝染るんです。』は、その後、2021年から東京新聞の4コマ漫画『かわうそセブン』として掲載されている。かわうそ君やかっぱ君、しいたけなどお馴染みのキャラクターが登場し、現代に沿ったギャグが展開されている。

『かわうそセブン』は現在でも毎週土曜日東京新聞の朝刊に連載されているので、令和の時代にどのような活躍をしているのかもぜひ見てほしい。

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