■リーダーはあまのじゃくなお嬢さま?
最後に紹介するスケバンは、新沢基栄さんの学園コメディ『3年奇面組』(1980年)および『ハイスクール!奇面組』(1982年)に登場する天野邪子。
主人公・一堂零たち「奇面組」のように、スポーツを得意とした「腕組」やイケメン集団の「色男組」など、5人のメンバーによって集結されるグループが登場する同作。長いスカートと腰まで届く黒いロングヘアーが特徴の邪子は、5人のスケバンチーム「御女組(おめぐみ)」のリーダーだ。
メンバー全員が中学を2留しているが、実は頭が良い邪子はわざと0点を取るような"天邪鬼"。御女組を結成した理由も、他メンバーの居場所を作るためで、スケバンらしい格好や行動は彼女たちに合わせた結果。仲間思いな邪子だが、メンバーにはまっとうになってほしいと願っている。
とはいえ、小学生の頃から煙草を咥え、他校どころかヤクザとケンカするほどのスケバンぶりだが、実は裕福な家庭で育った“お嬢さま"だ。
一堂零にはいく度となく縁があり、風邪で体調が悪い時には助けてもらい、捨て猫を預け、そのうえテレビアニメ(1985年)では彼氏のフリまで頼んでいる。また、一時期は熱血教師・事代作吾に一目ぼれするも、奇襲をかけ投げ飛ばした挙げ句に「弱い」と吐き捨てるなど、邪子の恋心(?)はかなり複雑だ。
そんな邪子がある日、リボンで髪を束ね、普通の制服姿で登校したうえで零たちに「(この格好は)おかしい?」と頬を赤らめながら尋ねたことがある。このときの彼女は普段と違った可愛らしさであるものの、零をはじめとした奇面組は「おかしい!!」と即答。やはり邪子にはスケバンの格好が一番似合うようだ。
他にも、『愛と誠』の高原由紀は嫉妬に狂い、『おいら女蛮』の主人公・蛮は男でありながらスケバン姿など、昭和の少年漫画をふり返るとスケバンが多かった。番長やツッパリ(不良)に比べ活躍は少ないものの、一途で可愛いキャラクターが多いためか、ヒロインのライバルなど物語に花を添える存在でもあったのだ。
現在では「スケバン」という言葉はすっかり使われることのなくなったが、当時の読者を夢中にさせたのは間違いないだろう。