■ホムンクルスの父『鋼の錬金術師』お父様・内野聖陽

 最後は、2022年公開の実写映画『鋼の錬金術師 完結編 復讐者スカー』、『鋼の錬金術師 完結編 最後の錬成』から、“お父様”を演じていた内野聖陽さんを紹介したい。

 本作は、2001年から『月刊少年ガンガン』(スクウェア・エニックス)にて連載された、荒川弘さんの世界的人気漫画『鋼の錬金術師』を原作とする実写映画シリーズだ。作中では舘ひろしさん演じるキング・ブラッドレイや、本郷奏多さん演じるエンヴィーなど、悪役として魅力的なホムンクルスたちが多く登場する。

 そして、そのホムンクルスを生み出し、彼らから“お父様”と呼ばれるラスボスを演じたのが、内野聖陽さんだ。

 “お父様”はエルリック兄弟の父親であるヴァン・ホーエンハイムと瓜二つの姿をしているのだが、実写映画では内野さんが一人二役を演じている。

 物語終盤で描かれる、この二人の直接対決。悪の親玉として貫禄のある“お父様”と、キーマンでありながら終始ゆるい感じのヴァン・ホーエンハイム、その超重要人物二人を見事に演じ分けていた内野さんはさすがであった。

 ちなみに、クライマックスでは“お父様”は若返った姿になるのだが、そちらは主人公のエドワード・エルリックを演じる山田涼介さんが登場する。山田さんは若い頃のヴァン・ホーエンハイムも演じているので、なんと一人三役の活躍だ。エドワードを演じている山田さんとは目つきからして別人で、内野さんにも負けない見事なラスボス演技を見せていた。

 

 今回は、バトル漫画実写化で稀代の悪役を演じた俳優たちを紹介してきた。紹介したなかには原作通りのキャラクターもいれば、少しアレンジを効かせた実写ならではのキャラクターもいた。

 しかし共通することは、いずれの俳優も見事な悪役っぷりで物語を盛り上げていたことだろう。彼らが演じた悪役は観る人の心に爪痕を残し、作品により深い彩りを加えていたように思う。

  1. 1
  2. 2
  3. 3