■征く道の違いを赤と青で現した名シーン『呪術廻戦』
最後は、『呪術廻戦』28話「懐玉‐肆‐」を紹介しよう。
Aパートでは、守るべき天内理子と友人である五条悟の死に激昂する夏油傑が、伏黒甚爾と激突する様子が描かれる。Bパートは死んだと思われた五条が復活し再び伏黒と対峙。覚醒した五条は「虚式 茈」を放ち、伏黒の半身を貫いたところでEDとなる。
そしてCパート。夏油が盤星教の施設を訪れると、天内の遺体を抱えた五条の姿を目にする。神と崇める天元と天内の同化を否としてきた盤星教は、天内の遺体を抱える五条に気味の悪い笑顔を添えて溢れんばかりの拍手を送るのだ。
罪なき少女の死を喜ぶ集団を背に、五条は「こいつら殺すか?」と、夏油に問う。この集団の死に意味はないとする夏油に「意味ね。それ、本当に必要か?」と、再び問う五条。
互いに背を向けて交わされるこの会話は、感情か倫理観か、それぞれが重視する方向性の違いを示唆した重要な構図となっている。そして夏油の足元の闇がゆっくりと広がっていき、第28話は幕を下ろすのだった。
この濃密な内容がおよそ30分に凝縮された第28話。映画を一本見終えたかのような満足感が得られると同時に、言葉にし難い虚無感に襲われてしまう。どのシーンも見逃せない内容ではあるが、のちの展開を考えればこのCパートこそが、第28話でもっとも重要なシーンだったように思えてならない。
およそ30分という放送時間はあっという間で、EDが流れると次回の放送を思いながら少し寂しい気持ちになってしまう。そこで意表を突くように刺し込まれるCパートでは、時に衝撃的な展開が描かれ、次回も絶対に見逃さんとするための活力を与えてくれているようにも思うのだ。
こうした重要なシーンを含むCパートを見逃さないために、ぜひともED後までチャンネル変えることなくアニメを見届けてほしい。