今からちょうど30年前となる1994年3月19日は、アニメ『美少女戦士セーラームーン』シリーズの3作目に当たる『美少女戦士セーラームーンS』の放送開始日だ。
当時社会現象となった同シリーズの中でも、ファンの間で特に人気の高い『S』。その理由は、セーラーウラヌス、セーラーネプチューン、セーラープルート、そしてセーラーサターンが初登場するためだ。前作までは中学2年生だった月野うさぎたちも中学3年生に進級し、ちびうさもセーラーちびムーンとなる。
本作ではキーアイテムとして「ピュアな心」を持つ人間の中に隠れた「タリスマン」の概念が登場し、中盤からはセーラー戦士たちとウラヌス&ネプチューン、敵組織デス・バスターズとの三つ巴の戦いが描かれた。
■美しい演出に視聴者が夢中になった「ウラヌス達の死? タリスマン出現」
『S』には、30年が経過してもいまなお、ファンの心に強く残る「神回」がいくつもある。その1つが、2020年に行われたNHKによるファンによる大投票企画『全美少女戦士セーラームーンアニメ大投票』のエピソード部門で第4位に選ばれていた『S』第21話「ウラヌス達の死? タリスマン出現」(1994年10月15日放送)だ。
この回の演出担当はアニメ『少女革命ウテナ』で知られる幾原邦彦監督。前話である20話「衝撃の刻! 明かされた互いの正体」(同年9月24日放送)でお互いの正体がわかってしまったうさぎたちと、天王はるかのやりとりが描かれる。
この回はウラヌスとネプチューンの伝説の回といわれており、見どころは、なんと言っても2人がお互いを思い合う深い愛を感じる演出だ。
ネプチューンがウラヌスをかばって敵に囚われ、なおもウラヌスを助けるためにあらがい、ついに倒れてしまう。また、ずっと探し求めていたタリスマンが己の中にあると知り、さらにネプチューンを失ったウラヌスは、「ずるいじゃないか、みちる 自分だけの世界に行くなんて」とつぶやきながら自らの胸に銃を向けるという衝撃の展開を迎えるのだ。
シリーズ屈指のベストコンビの2人の絆の深さを、これでもかと感じるこの回。当時から『セーラームーン』には大人のファンも多かったとはいえ、子ども向け作品でメインキャラクターが自ら自身の胸に銃を向ける展開は予想だにしなかったことだろう。いまだにウラヌス&ネプチューンがペアでの人気が根強いのも、この回の演出があまりにも見事だったからこそかもしれない。