『変な絵』謎のベストセラー作家・雨穴が語る「ホラー作品」の持つ大きな力 「寿命を削ってでも作品を作りたい」 の画像
『変な絵』の著者・雨穴氏

 YouTuber兼ホラー作家として活躍する「雨穴(うけつ)」氏のヒット作『変な絵』(双葉社)がコミカライズされることになり、コミックシーモアにて独占先行配信がスタートした。

『変な絵』は、“何かがおかしい”9枚の奇妙な絵に秘められた謎を紐解いていくスケッチ・ミステリー。とあるブログに投稿された「風に立つ女の絵」、消えた男児が描いた「灰色に塗りつぶされたマンションの絵」、山奥で見つかった遺体が残した「震えた線で描かれた山並みの絵」……これらの絵に隠された秘密に、さまざまな登場人物が向かい合っていく。

 そんな作品を生み出している雨穴氏に、好きな漫画やアニメの作品を語っていただくインタビューシリーズ。今回は雨穴氏が最近気になっている漫画について聞いた。今、雨穴氏はどんなものに興味を抱いているのか。そして、今後の活動は――?


――『変な絵』のコミカライズ版がついに3月15日に公開となりました。どのように楽しんでほしいですか。

「とにかく、まずは何も考えずに楽しんでいただきたいです。『変な絵』は、自分のデビュー作である『変な家』で得た経験と反省を存分に活かして作った、一番の自信作です。漫画になることで、自分の描きたかったものがよりリアルに再現されると思うので、小説をお読みになった方も、まだ呼んでいない方も楽しんでいただけるのではないかと考えております。

――雨穴さんは漫画にもお詳しいですが、どんなふうに新しい漫画の情報を手に入れているのでしょうか。

「最近は、SNSでオススメされている漫画を読むことが多いですね。面白い漫画を見つけて、発信しているアカウントをチェックするようにしています。あとは、いわゆる口コミですね。私は『オモコロ』というメディアに所属しているのですが、そこにいるみんなは漫画好きで、漫画のオススメ記事を書いていたりもするんです。そこで興味があるものを自分で読んでみる……ということが多いですね」

――『オモコロ』の同僚のライター陣から、漫画を知るというわけですね。

「そうですね。みんなそれぞれ趣味が違っていて、楽しみ方もバラバラなんですけど、良いものをジャッジするセンスは信頼しています。だから、自分の趣味じゃない漫画も、彼らが薦めるなら読んでみようという気になります」

――最近、お読みになった漫画はどんなものがありますか。

「最近は、たかたけしさんの『住みにごり』(2022年~)を更新されるたびに読んでいます。今のネットでは“誰かひとりを悪者に仕立てて、その人を攻撃すること”で多くの人から反響を集めるというケースが多いと思うんです。自分もネットで活動している人間なので反省しなくちゃいけない部分でもあるんですけど。でも『住みにごり』の世界はそういうところから完全に距離を置いていて……」

――ネット的な「人を悪者に仕立てる傾向」とは違うものを描いていると?

「この作品では、最初は悪者に見えたけど、でも実はそうでない部分が見えてきて良い人に見えてくる。ところが、良い人だと思っていたら別の悪い部分が見えてきて……という、とても複雑な構造が見えてくるんです。でも、人間って本来そういうものだと思うんですよね。“そうそう、人間同士が一緒に生きるってそうなんだよな”と頷きながら読んでいます。SNS疲れをしている自分には癒しになっているなと思っています」

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