松本零士、矢沢あいに芥見下々! わざと性別を偽った人も…!? 「超有名漫画家」たちのペンネームの由来の画像
松本零士著『君たちは夢をどうかなえるか』(PHP研究所)

 漫画家にとってペンネームは、自分の存在や作品を世間に示す大切なもの。もちろん本名で活動している人もいるが、ペンネームに意味を込めて名付ける人やクスッと笑える個性的な名前を付ける人、あえて性別の違う名前を付ける人などもいて、その由来が気になるところだ。

 そこで今回は有名漫画家を5人ピックアップし、ペンネームの由来を深堀りしていこう。

■有名アーティストへのリスペクトを込めた矢沢あいさん

 まずは、90年代の少女漫画界をけん引した人気漫画家の矢沢あいさんを紹介したい。代表作は『天使なんかじゃない』『ご近所物語』『NANA-ナナ-』などで、矢沢さんの描く個性豊かなキャラクターが繰り広げる恋愛模様は、当時の女子たちを夢中にした。

 そんな矢沢あいさんのペンネームは、彼女が敬愛してやまない矢沢永吉さんから取ったものだ。『矢沢永吉公式サイト』が行った50周年アニバーサリー企画では、矢沢永吉さんをリスペクトする12名の著名人に選ばれ、お気に入りのプレイリストを公開している。

 そのインタビューの中で、「すでにお気づきの方もいらっしゃると思いますが、私のペンネームの『矢沢あい』は青春時代に矢沢永吉さんを好きになりすぎたことが由来です。」と、矢沢永吉さんへの愛を熱く語っていた。

■謙虚な人柄が現れている芥見下々さん 

 次は、2018年から『週刊少年ジャンプ』で絶賛連載中の『呪術廻戦』の作者の芥見下々さん。芥見さんは個性的なペンネームもそうだが、プロフィールの詳細を明かさないミステリアスな漫画家としても知られる。

 そんな芥見さんのペンネームの誕生秘話は、フジテレビONEの『漫道コバヤシ』にメカ丸のコスプレで出演した際に明かされた。それによると、元々は「どくだみミルク」というペンネームにしようと思っていたのだとか。

 しかし漢字にすると作品よりも強くなるということで却下となり、画数が少ないものに変更することとなった。そして、ご時世的にへりくだったものに……と考えた結果、「くず」を意味する「芥」と「下手に出る」という意味を込めて「下」を使い、同じ音が続くのが好きという理由から「芥見下々」になったそうだ。

 “へりくだる”に関しては、「ジャンプフェスタ2020」に出演した際に、クリーニング店でのアルバイト経験の中でその考えに至ったのだとか。ちなみに、姓名判断では「集英社と芥見下々は相性がいい」と言われたそうだ。

■零時まで働くサムライ…松本零士さん

 松本零士さんは、『銀河鉄道999』『宇宙海賊キャプテンハーロック』といった数々の名作を生み出した漫画界の巨匠だ。デビュー当時は本名のひらがな表記「松本あきら」名義で活動していたが、1965年から「松本零士」名義を併用するようになり、68年からは「零士」で統一している。

「零」という字には、“零歳”の感覚を忘れないようにという想いが込められているのだとか。さらに、松本さんは深夜0時頃になってからアイデアが浮かぶことが多かったため、“零時”を過ぎてまで働く自分自身を、侍の意味を持つ「士」の文字で示しているそうだ。

 2008年の「毎日・北九州フォーラム」で開催された松本零士さんの講演会では、「零士の零には無限大という意味がある」とペンネームの由来も明かしていた。そして、このときにも「士」という漢字が「侍」を意味することに触れ、「あきら」という読み方もあると続けている。一心に漫画を書き、名作を生み出し続けた松本さんは、まさに漫画界の侍だろう。

■昆虫好きがペンネームになった手塚治虫さん

 松本さんと同じく、レジェンド漫画家の中では、『鉄腕アトム』『ブラック・ジャック』などの超名作を生み出した手塚治虫さんのペンネームの由来もなかなかに個性的なものだ。

 手塚さんの本名は「手塚治」なので、ペンネームはそこに「虫」をつけただけのシンプルなものなの。読み方は「おさむ」ではなく昆虫の「オサムシ」と読めてしまうが、デビュー当時は手塚さん本人が「オサムシ」と読ませていたので、それはそれで正解とも言えるだろう。

 治虫の名は歴史が古く、手塚さんが大の昆虫好きだった小学生のころに生まれている。ある日、『原色千種昆蟲図譜』を見ていたときに、友人のひとりが本に載っていた”オサムシ”を見て、冗談で「手塚オサムシ」と言ったことが発端なのだとか。

 ヒョロヒョロしていて肉食で夜行性というオサムシの特徴が自分に合っていると感じた手塚さんは、「手塚オサムシ」を気に入り、そのときから自分を「手塚治虫」と名乗るようになったのだ。

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