■主人公の小さな友達との1年にわたる出会いと別れ…『あらいぐまラスカル』
最後に紹介する『あらいぐまラスカル』(1977年)は、11歳の少年スターリング・ノースとあらいぐまの子どもラスカルとの友情を描いた『世界名作劇場』第3作目となる作品。
アメリカの作家スターリング・ノースが少年時代を振り返った自伝的小説『はるかなるわがラスカル(Rascal)』を原作にしたアニメで、ラスカルとの出会いから別れまでの1年間が描かれている。
アメリカ・ウィスコンシン州のブレールスフォードに住む少年・スターリングは、森で母親を亡くしたあらいぐまの赤ちゃんを拾い、ラスカルと名づけ育てていた。そんな彼らの別れは意外にも早く、成長したラスカルが近隣の畑を荒らすようになったこと、そして父親が事業を失敗しミルウォーキー(都会)に引っ越すことで訪れた。スターリングは思い悩んだ末、人家から遠く離れた森の奥へとラスカルを放すことにする。
スターリングはラスカルを乗せたカヌーで目的地に着くと夜を待ち、いよいよ別れの時を迎える。岸にはメスのあらいぐまが姿を見せており、それに気付いたスターリングは「行っておまえの幸せをつかめ。行け、ラスカル」と、森へと帰らせた。岸へ泳ぐラスカルの後ろ姿をテレビで見ていた子どもたちは、スターリング同様に目にいっぱいの涙を浮かべたはずだ。
意外にも、声優・野沢雅子さんが声を務めていたラスカルの愛らしさだけでなく、スターリングがいじめっ子と対決したり、さらに母親の死や父親の事業の失敗などを経験したりしながら、少しづつ成長する過程も魅力的であった。
以上、3作品を取り上げたが、個人的には『私のあしながおじさん』(1990年)も非常に泣ける名作である。
孤児であるジュディ・アボットは“あしながおじさん”の支援で名門女学院に入学し、やがて青年実業家のジャーヴィスと恋に落ちる。孤児院出身を隠していた彼女はその恋を諦めようとするのだが、39話の卒業式壇上にて自身の身の上を明らかにする。このときのジュディのスピーチが本当に素晴らしくて泣けるのだ。最終回(40話)でジョディが“あしながおじさん”と対面したシーンでは、思わず驚きや喜びの涙を流したファンも多いかと思う。
他にも、『ペリーヌ物語』(1978年)や『赤毛のアン』(1979年)など、素晴らしい物語を届けてくれた『世界名作劇場』。大人になった今も涙腺が潤むほどの感動が残る「名作」ばかりだった。