■小さな少年の過酷な一人旅を毎週ドキドキしながら応援!『母をたずねて三千里』

 まだ海外旅行が憧れの存在だった昭和の時代に、異国を旅する少年と旅愁を誘う勇ましい主題歌にドキドキしたのが、『世界名作劇場』第2作目となる『母をたずねて三千里』(1976年)だ。

 同作は、1882年のイタリアの港町・ジェノバに住む主人公・マルコが、アルゼンチンに出稼ぎに行った母・アンナを探すため、白い猿・アメデオと旅する物語。イタリアの作家エドモンド・デ・アミーチスの小説『クオレ』の挿入話(短編)を原作に、本来登場しないキャラクターやエピソードを大幅に盛り込んだ作品だ。

 作中で幼いマルコが船に乗り、海を渡ったのにも驚いたが、自力で路銀を稼ぎ、食べるものにも困窮しながら頑張る姿にはつい応援したくなった。そんなマルコが過酷な旅の末、ようやく会えた母は重い病気を患い危うい状態。やつれた顔で眠る母親にすがり泣くマルコの姿に、「もしも自分のお母さんが……」と想像し、涙した子どもたちは多かったに違いない。

 ところが、息子との再会でアンナは奇跡的な回復をみせ、それまで流していた視聴者の涙が、喜びのものに変わることになる。

 まさにクライマックスとなる再会シーンだが、このエピソードは51話「とうとうかあさんに」で、実は最終回ではない。

 翌週放映された最終回第52話「かあさんとジェノバへ」は、マルコの旅路を母と辿りながら、お世話になった人にあいさつをしてまわるというエピソード。とはいえ、この大団円に、マルコを見守り続けたファンも苦難の旅を思い返し、感動を味わったはず。

 余談だが、本作スタッフには場面設定に宮崎駿さん、演出に高畑勲さん、絵コンテに富野喜幸(現:富野由悠季)さんなど、後のアニメ界を牽引する大御所たちが関わっていた。

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