「国際女性デー」に読み返したい! たくましく働く女性たちを描いた漫画『ショムニ』のすごさを振り返るの画像
安田弘之さんの漫画『ショムニ』

 1995年から雑誌『モーニング』(講談社)にて連載が始まった安田弘之さんの漫画『ショムニ』は、「ショムニ」と呼ばれる社内の厄介者を集めた「庶務二課」で働く破天荒な6人の女性たちをコメディチックに描いた作品である。男性誌の連載だが、彼女たちの力強さは働く女性たちにも大いにウケ、人気を博した。

 1998年からは江角マキコさん、宝生舞さん、櫻井淳子さんら豪華キャストによりフジテレビ系でドラマ化され大ヒット。ドラマ版では主人公が塚原佐和子から大胆で豪快な坪井千夏に変わっているが、坪井を演じた江角さんのはまり役っぷりがヒットの要因の一つになっていたのかもしれない。

 90年代は女性の社会進出に注目が集まり始めた頃だが、まだまだ会社での女性の立場は弱かった。そんな中、自由気ままに振る舞い自分を貫き通すショムニのメンバーは新鮮に映ったものだ。

 今回は、国際女性デーの3月8日に、多くの女性に活力を与えてくれた漫画『ショムニ』の魅力を振り返ってみたい。

■自由さに憧れる?突き抜けた個性的を持つキャラたち

 ショムニで働く6人の女性は、みな個性的な性格で誰一人似ているキャラがいない。一緒に働いたら楽しそうだけど、苦労が多そう……と思わせる強キャラが揃い踏みという点が、作品の面白さの一つだ。

 中でも、相手が上司だろうと男性であろうとお構いなしに食ってかかる坪井と、消極的で意見を言えない塚原という対象的な性格の二人のインパクトが強い。

 塚原は次第に垢ぬけ、積極的になっていく。「子どもの頃から変われなかった私をいとも簡単にこんなふうにしてしまったのは坪井先輩だ」とも言っていて、良くも悪くも坪井の影響を大きく受けていることがわかる。

 現実的な目線から見れば、人付き合いが苦手で自分に自信が持てないながら、会社という組織の中でどうにか頑張ろうともがく塚原に親近感を抱く人が多いだろう。そして、坪井の真正面からぶつかるハートの強さに驚き、惹かれていくのである。とはいえ、彼女も昔は塚原同様、おとなしい性格だったというから驚きだ。

 他のキャラたちも負けていなかった。たとえば3秒で男を落とせる魔性の女・宮下佳奈や、坪井に負けず劣らず豪快で大雑把な関西人・徳永佳代子(ドラマでは徳永あずさ)、一言多くて上司にもケンカを売ってしまう日向知世(ドラマ版では日向リエ)。彼女たちもまた自我が強く、相手が誰でも嫌なものはハッキリ嫌というし、同僚に対しても遠慮がない。そのさっぱり感もまた好感が持てるのだ。

 エリート社員・右京友弘も良いキャラで、プライドの高さの陰に隠れた打たれ弱さ、マザコンぶり、ひねくれ具合はある意味とても人間味があった。麻雀にハマって落ちぶれてしまったり、塚原のために自分を変えると言い、なぜか女装に目覚めてみたりと、笑いのポイントもしっかりと掴んでいる。

■他者からの評価は気にしない!たくましい女性たちの痛快な行動

 令和の現代と、『ショムニ』が連載されていた平成の時代とでは、会社内での女性の立場が大きく違う。坪井たちショムニメンバーを印象付ける制服も、男女雇用機会均等法の施行以降、廃止する企業が増えた。

 作中では今ならばセクハラやモラハラではと捉えられるような描写もあったし、お茶汲みも女性がしている。しかし、ショムニのメンバーは、それすらも跳ねのけてしまう。むしろ、坪井たちのほうが上司陣に対してパワハラをしている節すらもあるほどだ。

 漫画『ショムニ』は基本的にギャグ多めのコメディであり、ほぼほぼ全員がやりすぎなほどに型破りの行動をとる。しかし、まだ男性優位な傾向があった平成に、彼らと対等に張り合い、たくましく自分を貫く彼女らの姿は読んでいて痛快感があった。

 とはいえ、作中で彼女たちはほとんど仕事らしい仕事をしていない。坪井はもともと仕事ができるタイプの人間だが、緩く働くことがモットーであり決して頑張らない。他のメンバーも、お昼に社内電話が鳴っても「お昼だから仕事なんてしない」と言ってのけ、パソコンのデータを消してしまっても「よくあること」とガハハハと笑って、気にも留めないのだ。

 ただ、『ショムニ』を読んでいると、会社の人間関係や仕事の内容で悩むことが馬鹿らしく思えてしまう。実際の会社であれだけ奔放な態度を取っていたら問題になってしまうだろうが、それでも彼女たちの自由さは、社会のしがらみに揉まれる我々読者にいい刺激をもたらしてくれるのだ。

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