文化や風潮というのは時代によって違う。たとえば今では人気の“コスプレイヤー”も、ひと昔前だったら、“変わった人”に見られていたかもしれない。逆に、昭和でよく見かけた“短ラン&ボンタン”姿の不良たちや、スカート丈の異常に長い“スケバン”たちだって、今見たら不思議な格好に思えるだろう。
昭和に人気を博した少女漫画には、その当時には当たり前だったファッションや文化、雰囲気などが次々に登場する。今回はそんな昭和漫画に登場した「あるある描写」をいくつか紹介したい。
■お嬢様は影のある男がお好き…!? お金持ちお嬢様&ちょい悪男子のカップル
昭和の少女漫画では、都会育ちのお嬢様がきらびやかな生活を送る様子が描かれる一方、格別裕福ではない男性が登場することが多かったように思う。
たとえば、一条ゆかり氏の『有閑倶楽部』は、日本で有名な超お金持ちの跡継ぎ高校生たちが集まったグループの話だ。作中登場する白鹿野梨子は父親が日本画の大家、母親が茶道の家元という生粋のお嬢様で、男嫌いの女子高校生だ。
しかし彼女はボロアパートで暮らす刈穂裕也という男性に出会ってから、ワイルドな彼の生き方に惹かれていく。自分とは対照的な生き方をする男性に心を動かされるお嬢様は、現実にも多かったのかもしれない。
似たようなケースは、池野恋氏の『ときめきトゥナイト』にも登場する。主人公の江藤蘭世が通う高校の生徒会長である河合ゆりえは、 成績優秀、スポーツ万能、品行方正な河合財閥のお嬢様だ。
幼い頃から使用人を抱える豪邸に住んでいるが、実はゆりえが想いを寄せているのは、その使用人の息子である日野克だった。校則を破りボクシングに没頭し、何かとゆりえに反発する克に、プライドの高いゆりえは自分の気持ちを伝えられない。こうした恋愛が多く展開されるのも、昭和少女漫画にはよくある展開だった。
■「あたいらをナメんなよ…」突如登場するスケバンたち
昭和は50〜60年代を中心に、若者の非行が社会問題になっていた。なかでも女子中高生で不良行為をする生徒は“スケバン”と呼ばれ、長いスカートにチリチリのソバージュヘア、濃いメイクをしている少女たちがいた。昭和の少女漫画でも、突如スケバンが現れてヒロインを脅すといった展開は多かった。
宮脇明子氏の『ヤヌスの鏡』は、祖母に抑圧されている女子高生・小沢裕美が夜になるとユミというもう一つの人格になり、次々に事件を起こすストーリーだ。
ユミは夜の繁華街で目立つ存在であるため、多くのスケバンに目を付けられる。建物の非常階段に呼び出されカミソリで攻撃を受けるなど、昭和の当時には多かったスケバンたちと対峙していく。
また、美内すずえ氏による演劇を舞台にした漫画『ガラスの仮面』にも、スケバンらしき恐ろしい女性が登場する。主人公である北島マヤの相手役となった里美茂は、“親衛隊”と呼ばれる女性ファンがいるほどの人気役者だ。しかしマヤと里美が恋仲になったことに嫉妬し、親衛隊のリーダーはマヤの頬にカミソリを当て、“二度とテレビに出れないようにしてやる”と脅すのであった。
スケバンの武器はなぜか決まってカミソリであり、それを指に挟んで相手を脅したり、傷つけたりすることが多かった。いま振り返ると冗談みたいなこの武器も、スケバンにとっては必須アイテムだったのである。