■夏は祭りに行きがち

 少年漫画ラブコメの夏のあるあるイベントとしては、夏祭りだろう。神社、浴衣、屋台に花火など、いわゆる“エモい”アイテムが揃っている。

 1980年から連載された、ラブコメ漫画の女王・高橋留美子さんの『めぞん一刻』(『ビッグコミックスピリッツ』)でも、夏祭りが描かれている。主人公・五代裕作とヒロイン・音無響子を含む四角関係が描かれた第37話「祭りの暗い片すみで」では、夏祭りの雰囲気も相まって五代は七尾こずえと、響子は三鷹瞬とそれぞれいい感じになっていた(最終的には何もなかったが)。そして、最後は五代に焼きもちを焼く響子がやはり可愛かった。

 高橋さんのもう一つのラブコメ代表作『うる星やつら』(『週刊少年サンデー』)でも、コミックス第19巻に「ああ夜店」という夏祭り回がある。本作らしいドタバタ劇がありつつ、ヒロイン・ラムのレアな浴衣姿が拝める。宇宙人のラムだが、しっかり日本の夏を楽しんでいた。

 一方、『ストップ!! ひばりくん!』の夏祭りは少し珍しいかかわり方だ。主人公・坂本がお世話になっている大空家が極道一家であるため、夏祭りは楽しむ側ではなく、取り仕切る側で描かれていた。これはさすがに珍しいパターンだろう。

■雪山では遭難しがち

 最後に紹介するあるあるは、雪山遭難だ。夏は夏祭りに行きがちだが、冬は雪山で遭難しがちなのだ。

『The・かぼちゃワイン』のアニメ版スペシャル「おれとあいつの新婚旅行!?」で、春助とエルはスキー中に遭難する。二人はある屋敷にたどり着き快く主人に招き入れられ、夜は“同じベッドで寝る”的な羨ましい流れになるが、物語は屋敷の主人の怪しい行動によりだんだんと不穏な雰囲気になっていく。

 さらにかなり過酷な状況だったのが、『きまぐれオレンジ☆ロード』の雪山遭難だ。コミックス第6巻のスキー旅行の話では、スキー場のゴンドラが停止。恭介とまどかは夜の雪山に閉じ込められる。さらに不運なことにゴンドラの窓ガラスも割れ、氷点下のなか二人は一枚の毛布に包まり耐えることに……なかなか厳しいシチュエーションだが、まどかのような美少女と二人なら、それはそれで羨ましいかもしれない。

 ちなみにこの二人は、コミックス第11巻でも雪山遭難を経験している。今度は、恋人同士で滑ると必ず遭難して丸裸の遺体で発見されるという「すっぽんぽん伝説」があるスキー場での遭難だった。現実の雪山遭難は相当な事件なのだが、ラブコメでは結構あるあるだったように思う。

 

 今回は、1980年代「ラブコメ少年漫画・アニメ」の“あるあるシチュエーション”を紹介してきた。振り返ってみると現在の漫画でも見られるような定番のものも多く、80年代のラブコメ漫画全盛期に面白いシチュエーションは考えつくされ、ある程度完成に至ったのかもしれない。

 当時は妄想してみても叶わず、しかし、今見直してもやはり面白い。実に羨ましい1980年代「ラブコメ少年漫画・アニメ」の、“あるあるシチュエーション”だった。

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