スポーツ漫画の多くの作品では、熱血キャラクターが中心となって感動シーンを生むものだが、その一方で、チームメイトやライバルに「やる気のないキャラクター」が配置されることも珍しくない。一見ダルそうに見える彼らだが、その多くは本当にやる気がないわけではなく、とてつもない実力を持っている。そして、彼らがその真に秘めたる実力でチームを勝利に導く展開も“あるある”だ。
そこで今回は、一見「やる気がなさそう」だが、高い実力を秘めているキャラクターをピックアップ。そのキャラクター性を振り返ってみたい。
■楽しいわけではない?勝利に導くチームの頭脳
最初に紹介するのは、古舘春一氏の漫画『ハイキュー!!』に登場するセッター・孤爪研磨。研磨は音駒高校の2年生選手で、烏野高校の主人公・日向翔陽とはライバル関係であり仲の良い友人。しかし、バレーボールに対して情熱的な日向と比べて、研磨は特別楽しいとは思っていないタイプだ。
セッターというポジションは攻撃を組み立てる司令塔であり、運動センス抜群のプレイヤーが務めることも多い。一方で研磨はというと、体力がなく、試合中も「疲れるからできるだけ動かない」というプレイをし、そのうえ練習も好きではないため、一見やる気がないように見える。実際、惰性で続けているところもあるようだ。
しかし、頭脳派プレイヤーの研磨はじっくりと相手を観察し、徐々に追い詰めていく。守りの要であるリベロ・夜久衛輔が負傷退場した際は、チームメンバーの士気が下がった。しかし、ここで研磨は「テンション下げすぎ ダイジョブなんじゃない?」と一言、声をかける。高い分析力でゲーム運びを進め、守りのエース・夜久が不在の中、劣勢に陥っていた状況を立て直したのだ。
その粘り強さが音駒の強さそのものであり、春高予選では激戦区である東京代表枠3校のイスをもぎ取った。やる気を見せないキャラクターだが、2月16日から公開となった映画『劇場版ハイキュー!! ゴミ捨て場の決戦』では、そんな研磨の心情の変化がどう描かれるかにも注目だ。
■暴力が日常茶飯事!10年に1人の逸材
続いては、奇抜なテニスの試合を描く許斐剛氏の漫画『テニスの王子様』より。
本作に登場する亜久津仁もまた、やる気を見せないキャラクターだ。阿久津は身体能力や筋肉に優れており、いわゆる「持って生まれたもの」に恵まれていた。テニス界で10年に1人の逸材とまで言われるが、何も努力をしなくても上達し、試合では無敗を誇っていたため、テニスに対しての情熱を持つことはなく、やる気のまったく見えない不良キャラクターになってしまった。
ただ、テニスの実力は本物であり、都大会の決勝では主人公・越前リョーマと対戦し、苦しめた。天賦の才能による自己流のプレイスタイルは、相手の動きを見切って逆を突く技巧派。のちのU−17W杯のアマデウス戦では、その発展形ともいえる第8の意識「無没識(むもつしき)」に覚醒し、分身して複数の攻撃パターンを見せることでショットを打つ瞬間まで相手に球筋を悟らせない技を身につけた。
また、リョーマのチームメイトである河村とは空手道場仲間であり旧知の仲。全国大会でボロボロになった河村に「何 諦めてんだ河村」「死んでこい河村… そのかわりまたふっ飛とばされんなら 何度でも受け止めてやるよ」と激励したシーンが印象的だった。普段はやる気を見せないが、奥に熱さを隠し持つキャラクターだ。