かつて任天堂では、1997年から2007年にかけて「ニンテンドウパワー」というサービスを実施していた。これはファミコン時代のディスクシステムのように、ローソン店舗に設置されているマルチメディア端末機「Loppi」を使って、専用のカートリッジにスーパーファミコンやゲームボーイのソフトを書き込めるというもの。
1995年に始まった衛星データを利用した、スーパーファミコン用拡張機器「サテラビュー」に続き、新たなゲーム販売のスタイルを打ち出したもので、専用カートリッジのソフトを書き換えたり、容量が空いていればそこに複数本ソフトを追加したりこともできる、当時としては画期的なガジェットであった。
中のゲームを入れ替えられるということと、そして比較的安くゲームが買えることもあり、子ども心に夢のような仕組みの「ニンテンドウパワー」。時代はすでにNINTENDO64やプレイステーション、セガサターンといった“第5世代”に移り変わっており、注目度はそこまで高くなかったが、そんな中でも魅力を放っていた“名作”があった。
今回は、「ニンテンドウパワー」でリリースされたものの、時期的な面で埋もれてしまったスーパーファミコンのゲームたちを見ていこう。
■『ファイアーエムブレム』シリーズ屈指の高難易度タイトル
『ファイアーエムブレム』屈指の高難易度で有名な『ファイアーエムブレム トラキア776』。このソフトは当時、「ニンテンドウパワー」でのみ、遊べたタイトルだ。
スーパーファミコン『ファイアーエムブレム 聖戦の系譜』の外伝にあたり、キュアンとエスリンの息子であるリーフ王子を主人公にした作品。シリーズでも屈指の難易度を誇るタイトルで、豊富な地形、武器のバランス、魔法のバリエーションなどなど、様々な面で『ファイアーエムブレム』シリーズのファンを満足させたゲームだ。
当初は書き換え専用タイトルだったものの、後に通常のカートリッジ版としても発売されることとなった。とはいえ販売本数は少なく、やはりプレイする機会は、他の『ファイアーエムブレム』シリーズと比べると、やや少なくなっている。Wii系列機やニンテンドー3DSのバーチャルコンソールでは遊べるものの、Nintendo Switchへの移植は未だされていない。名作だけに、最新機種でプレイできる環境が望まれるところである。
■不遇の美麗グラフィックSFロボゲーム
次は二重に発売タイミングが悪く、埋もれてしまった名作『メタルスレイダーグローリー ディレクターズカット』だ。
まず本作は、人型ロボットが活躍するSF世界観が売りだったHAL研究所によるファミコン用アドベンチャーゲーム『メタルスレイダーグローリー』のディレクターズカット版。テーマだけでもユニークだが、とにかくもともとのファミコン版からして高クオリティに仕上がっていた。
グラフィックはきめ細かに美麗に書き込まれ、10人以上のかわいい女性キャラが登場する。そのうえ、彼女たちの表情の差分も多く、とてもファミコンのスペックで動くゲームとは思えない。まるでPCエンジンソフトのような印象を受けたほどだった。
そんな『メタルスレイダーグローリー』だが、発売されたのは1991年と、すでにファミコンの後継機であるスーパーファミコンが稼働している時代ということもあり、注目度はソフトのクオリティに比べると低くなってしまった。
そして、2000年にスーパーファミコン用としてリメイクされたのが『メタルスレイダーグローリー ディレクターズカット』だ。だが、こちらはニンテンドウパワー限定のタイトルで、そのうえ、またしても次世代機であるNINTENDO64やプレイステーションが発売された後になってしまった。
こちらもWii Uのバーチャルコンソールでは遊べるものの、Switchへの移植はない。時代に埋もれてしまった惜しすぎる一本と言えるだろう。