■『ガンダムSEED』で最も重要なキャラクターはフレイだった
フレイは戦争の犠牲者であり、決して悪人だったわけではない。というのは前述の通りだが、最後に筆者の意見を書いておきたい。
キラ、ラクス、アスラン、カガリのファンからは顰蹙を買うかもしれないが『ガンダムSEED』で最も重要なキャラクターはフレイだったのではないだろうか。
『ガンダムSEED』の世界での戦争の原因になっているのは、コーディネイターの誕生だ。それは強靭な肉体と優秀な頭脳を持って産まれて理想的な人生を歩めるという、人類が待ち望んだような進歩であると同時に、人類を二つに分断してしまった。フレイのコーディネイターに対しての差別的な感情は、その世界の中で植え付けられたものが大きい。父親を殺されて、個人や戦争を恨むのではなく、コーディネイター全体を憎悪するのも父親たちの影響だろう。
それでもフレイはコーディネイターであるキラを愛するようになるのだ。
人間が人間とコミュニケーションを取ることによって受ける影響というのは大きいものだ。ブルーコスモスの盟主であるムルタ・アズラエルも幼少期にコーディネイター達に敵わなかった苦い思い出から、コーディネイター全体に強い憎悪を抱くようになってしまい、核爆弾を使うまでに至った。
フレイがキラをコーディネイターではなく1人の人間として理解し、愛したことは人類が分かり合えるという希望だが、その希望であったフレイが死んでしまったことで、人類は戦争を続けていくという絶望に変わったようにも思える。まるで、作品のテーマを1人で象徴しているように見えるのである。やはり『ガンダムSEED』で最も重要なキャラクターはフレイ・アルスターではないか。
筆者は、小学生の頃に『ガンダムSEED』を見てラクスが好きになり、フレイはそこまで好きにはなれなかった。生々しさにドキドキした記憶はあるが、自己中心的なところが好きになれなかったと記憶している。ところが劇場版に備えて今回見返し、一変して大好きなキャラクターになった。
年齢を重ねると作品の見え方も変わるものだと感じた。最新映画公開を機に『ガンダムSEED』を見返して、同じようにフレイの魅力に惹かれたという人も多いのではないだろうか。