少女漫画ではよく、ヒロインの恋のライバルが登場する。その多くは友人同士で、同じ男の子を好きになってしまい葛藤するといった展開も多かった。
そして昭和の時代の少女漫画では、今ほど医学が進んでいなかったのもあって、虚弱で守ってあげたくなる女性が登場することも少なくない。主人公は元気だが、その一方ライバルとなる女性はつねに貧血などを起こして倒れてしまい、主人公より病弱な彼女を心配するプリンスも。今回は、そんなちょっと体が弱く、そのはかなさによって手ごわい恋のライバルになったキャラクターたちを紹介する。
■私の夫に近づかないで… 『はいからさんが通る』ラリサ・ミハイロフ
まずは、昭和50年代に人気を誇った大和和紀氏による『はいからさんが通る』から紹介したい。主人公の花村紅緒は、大正時代を生きる天真爛漫な少女。その許嫁である伊集院忍とのラブストーリーが描かれた作品だが、忍をめぐってライバルとなるのがロシア人のラリサ・ミハイロフである。
ラリサはもともと亡くなったサーシャ・ミハイロフ侯爵の夫人だった。彼女はある吹雪の日、シベリア出兵により負傷し倒れていた忍を助ける。その際、記憶を失くした忍があまりにも亡き夫にそっくりであったため、“あなたの名はサーシャ・ミハイロフよ”と教え込み、忍と夫婦になって日本へ向かうのだ。
紅緒からしたら、どう見てもサーシャが忍であり自分のフィアンセだと思うのだが、すでに妻となっているラリサの存在があって近づけない。しかもラリサは結核に侵されており、常に忍のサポートが必要であった。ラリサは咳き込みながら「わたしの夫に……サーシャに近づかないで……おねがいよ……」と紅緒に伝える。そんな様子を見て忍を諦めようとする紅緒。さらに後日忍も記憶を取り戻すのだが、自分のことを命がけで救ってくれた病弱なラリサを放っておけないのであった。
本当は相思相愛であるはずの紅緒と忍だが、病気におかされ残された命が少ないラリサを裏切ることはできない。優しい2人が相手を想いながらも、ラリサの希望を叶えてあげようとする切ない姿が印象的だ。
■最初はただ体の弱いお嬢様だったのに徐々に…『ガラスの仮面』鷹宮紫織
美内すずえ氏による演劇を題材にとった名作『ガラスの仮面』でも、主人公の北島マヤの強力な恋のライバルが登場する。それが世界有数の広告代理店の会長を祖父に持つ、超お嬢様の鷹宮紫織である。
紫織はマヤの想い人である速水真澄のフィアンセだ。真澄は紫織よりマヤのことが好きだが、紫織は真澄のことを心底愛している。幼い頃から病弱でやや世間知らずといった一面もあるが、登場した当初は優しいお嬢様キャラであり、よく貧血を起こしては真澄に助けてもらっていた。
しかし真澄の気持ちがマヤにあると知ると性格が一変。マヤの舞台写真を切り刻んだり、姑息な手段を使って小切手を握らせたりと、嫉妬から過激な行動に出る。また婚約を破棄されてからは自殺未遂を計って床に臥せ、紫のバラを毎日ちぎり続けるなど、精神的にも真澄を追い込んでいく。
紫織は登場当初は体の弱い美しい女性といったイメージだったが、徐々におかしな行動を取り、周囲をゾッとさせていった。しょっちゅう貧血を起こす反面、高いヒール&ワンピースはいろんな意味で危ないのでは?と思ってしまうキャラクターでもある……。