■あとちょっとで大好きな人からの人工呼吸だったのに… 『ときめきトゥナイト』
池野恋氏の『ときめきトゥナイト』は、1980年代に人気を博したラブコメディだ。
登場時、中学2年生だった主人公の江藤蘭世は同級生の真壁俊に初恋をし、ずっと一途に想い続けている。しかし、恋のライバル・神谷曜子にしょっちゅう彼との仲を邪魔されていた。
ある日、学校の臨海学校に行った一行。泳げない蘭世だったが、もともと魔界人の娘である蘭世は特殊能力を使い、サメに化ける。スイスイ泳ぐ蘭世だったが、変身が解ける原因となる“くしゃみ”をしてしまい、水中でもとの姿に……。あっという間に水の中に沈む蘭世を俊が助け、引き上げる。
水をたくさん飲んで気を失っている蘭世に人工呼吸をしようとする俊。“やめて~!”と焦る陽子が見守るなか蘭世は意識を取り戻してしまい、残念ながら好きな俊から人工呼吸を受けることはできなかった……というオチだ。
思えば80年代は漫画だけでなく、ドラマなどでも人工呼吸のシーンがよく見られた。コメディドラマやお笑いコントでも、わざと溺れたフリをして好きな人からの人工呼吸を待っていたような……。この『ときめきトゥナイト』のシーンも、そんな時代が垣間見える1コマである。
今回この記事を書くにあたり、気を失った人に対し本当に口移しで水や薬は飲ませることができるのかを調べてみた。結果、意識のない相手に何かを口移しで飲ませると、誤って気管に入るリスクもあるので控えたほうがいいとの記述があった。
しかし漫画でのシーンはそのような誤嚥は当然なく、口から口へと美しく運ばれているのが印象的だ。物語のポイントにもなる口移しのシーン、実際におこなうのは控えつつ、漫画の世界だけでキュンキュンさせていただこう。