『ガラスの仮面』や『ときめきトゥナイト』にも…昔の少女漫画に多かった“ヒロインに口移し”をするシーンの画像
『ガラスの仮面』第48巻(プロダクションベルスタジオ)

 人命を救うのに有効な手段とされる「人工呼吸」。今では災害に備えた人工呼吸用のマウスピースなども販売されている。

 しかし昔の少女漫画に登場する人工呼吸や口移しをするシーンは、ヒロインと彼の距離が近づきそうなときにおこなわれることが多く、人命救助というより“キス”をするイメージが強かった。

 今回はそんな胸キュンシーンともいうべき、昔の少女漫画に多かった口移しシーンを紹介したい。

■自分の気持ちを素直に認めつつマヤに薬を…『ガラスの仮面』

 美内すずえ氏による演劇を舞台にした漫画『ガラスの仮面』は、令和の今でも人気の衰えることのない不朽の名作だ。演劇をテーマにした作品でありながら、主人公の北島マヤと、彼女を支える大都芸能社長の速水真澄との関係からも目が離せない。

 そんな本作にも、真澄がマヤに口移しで薬を飲ませるシーンが登場する(コミックス17巻)。真澄の策略により、大好きな母親を病気で失ったマヤ。失意のどん底にいるなか、付き人に扮していた乙部のりえの存在もあり、マヤは演劇をする気力までも失ってしまう。

 小劇団のメンバーから追い出され、雨の中歩き続けるマヤはずぶ濡れのまま公園のブランコに。そこに真澄が駆けつけるものの、マヤは気を失ってしまう。

 自宅までマヤを運んだ真澄は医者を呼び、薬をもらったうえで眠り続けるマヤを見つめる。そこで真澄は「今こそ認めよう…! おれはおまえを愛している!」と、自分の気持ちをはじめてさらけ出す。その後、眠り続けるマヤに対し、真澄は自ら薬を口に含み口移しで薬を飲ませるのであった。

 薬を飲ませるためとはいえ、このシーンははじめて真澄が自分の気持ちに素直になり、マヤにキスをしているかのような大事なシーンだ。真澄はこの時点で自分の気持ちを確信し吐露したが、2人の関係に進展があるのはこれからまだずっと先のことである。

■口移しでのキスが花嫁奪還に成功!? 『はいからさんが通る』

 大正時代を舞台に、おてんばな主人公・花村紅緒のラブコメディーを描いたのが大和和紀氏による『はいからさんが通る』である。本作でも紅緒の命を救うため、口移しで水を飲ませるシーンが登場する。

 幸せな結婚を夢見ていた紅緒とフィアンセの伊集院忍だが、忍はシベリア出兵後に記憶を失い、一時はお互い別の人との結婚が決まってしまう。しかし徐々に記憶が戻ってきた忍は紅緒を諦めきれずにいた。

 そんな矢先、紅緒が上司の青江冬星と結婚する当日に関東大震災が起きる。紅緒の身を案じた忍は式場に駆けつけ、がれきの中で倒れていた紅緒を発見。

 何度揺り起こしても目が覚めない紅緒に対し、忍は水を口に含んで口移しで飲ませる。それがきっかけで目を覚ました紅緒は一度は自分が死んだものだと勘違いするが、目の前にいる忍が本物だと分かると抱き合い、もう二度と離れないと誓い合うのであった。

 このシーンでは紅緒のことを結婚相手である冬星も探していたが、一足早く忍が駆けつけ、救出した。口移しで水を飲ませたシーンは、まさに結婚式の誓いのキスを忍が奪ったような形であり、花嫁奪還に成功した瞬間とも言えよう。

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