アムロの母にウッソの母も…歴代『ガンダム』シリーズ「主人公と母親」の悲劇的な関係の画像
『機動戦士ガンダム』DVD-BOX1(バンダイビジュアル)

『ガンダム』シリーズの主人公たちは、家庭環境に問題を抱えているケースが多い。近年の作品である『機動戦士ガンダム 水星の魔女』でも主人公スレッタ・マーキュリーと母プロスペラの関係が大きく扱われていたが、それぞれの主人公の母親たちは、たいていの場合一筋縄ではいかない人物だ。

「ガンダム主人公の両親はクセ者ばかり」というのはガンダムファンの間でもよく話題に上がるテーマで、父と母であっても必ずしも理解し合えるわけではないことを教えてくれる。今回はシリーズの中でも特に印象に残る母親たちを振り返りたい。

■「こんなふうに育てた覚えはない」

 まずは、このテーマで欠かせない「カマリア・レイ」。『機動戦士ガンダム』第13話で初登場した主人公アムロ・レイの母親だ。

 カマリアは、宇宙の暮らしに馴染めないという理由で夫テム・レイと別居し、幼いアムロはテムが預かった。カマリアは技術士官であるテムが持つ地球居住権(半強制的な宇宙への移民が進んでおり、地球に望んで住めるのは連邦軍の関係者や富豪だけだった)を利用して地球での生活を続けていた。

 しかし、一年戦争では地球も戦場となってしまう。空襲を受け、避難民キャンプでボランティア活動をしていたカマリアは、ホワイトベースのクルーとなったアムロと出会う。2人はお互いの無事を喜び合うが、息子と離れて暮らしていた母は彼の成長についていけなかった。

 アムロと話をしていると、ジオン兵2人が偵察にやってくる。カマリアは連邦軍服を着ているアムロを隠そうとするがバレてしまい、やむなくアムロはジオン兵に向けて拳銃を発砲。1人に命中する。

 それを見たカマリアが放った言葉が「こんなふうに育てた覚えはない」「なんて情けない子だろう」というものだ。

 子どもが人に向けて拳銃を撃つ姿は、確かに気持ちのいいものではないだろう。

 ただ、彼女は別居生活を送っている母という立場であり、その間に、息子は戦場に立つ兵士の一人になっている。「男子、三日会わざれば刮目して見よ」という慣用句があるが、3日どころか長らく会わなかったアムロをカマリアは受け止めきれなかったのだろう。

 アムロはホワイトベースのクルーとしてカマリアに敬礼という形で別れを告げる。作中ではこれ以降カマリアとアムロが会うシーンは描かれない。親離れ、子離れのエピソードだ。

■息子をほったらかしだったシーブックの母

 続いては映画『機動戦士ガンダムF91』の主人公シーブック・アノーの母親「モニカ・アノー」だ。

 モニカは地球連邦軍の開発機関・サナリィでバイオ・コンピューターの開発責任者を務める技術者で、かなりの仕事人間。家には長く帰っておらず、夫のレズリーにシーブックとその妹リィズの世話を任せていた。

 家庭を顧みない女性という見方もできるかもしれないが、人格者として描かれる夫のレズリーがモニカのことを理解していることを見ても、彼女は悪母というわけではないだろう。

 確かに最初にシーブックがF91に乗り戦闘に参加していることを知ったときには驚き、整備を断った。前述のカマリアと同じで、息子の変化に対して戸惑ったのだ。だが、最後には母親としてそして技術者として助言をし、シーブックを導いている。

 仕事にかまけて家に帰らなかったことに関してもきちんと謝っている。息子から見ればひどい母親だったかもしれないが、自立心を持つ女性だったとも言えるだろう。

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