『ガンダム』シリーズに登場する機体は、おもに人型のモビルスーツ(以下、MS)と異形の姿をしたモビルアーマー(以下、MA)に分けられることが多い。
とくにMAは単機での制圧力に長けており、各シリーズにおいて戦場を蹂躙する描写が多々見られる。数あるMAの中でも“最凶”クラスの性能を誇るのが『機動戦士ガンダムF91』に登場した「ラフレシア」だ。
今回はそんな「ラフレシア」に焦点を当てて、その性能がいかに凶悪なものであったかを紐解いていこう。
■パイロットに寄生し花咲く姿はまさに「ラフレシア」
宇宙の闇に映える真っ赤なカラーリングの「ラフレシア」は、その名の通り巨大な花を模した形状で、異様な美しさと不気味さを醸し出している。機体サイズは37.5mで、これは『機動戦士ガンダム』に登場する「エルメス」の85.4mに比べれば半分にも満たないサイズだ。案外小ぶりな印象を受けるが、これは宇宙空間に漂う125本の「テンタクラー・ロッド」が放つ威圧感とのギャップによるものではないだろうか。
「ラフレシア」には、搭乗者であるカロッゾ・ロナが開発した“ネオ・サイコミュ”という独自のシステムが組み込まれている。これは、あらかじめ肉体を強化されたカロッゾと「ラフレシア」を有線接続することで、機体そのものを脳波のみで制御することができる夢のようなシステムだ。
『F91』より前の時代で使用されていた“サイコミュ”兵器に比べても、こと制御面においては優れたシステムだといえるが、逆にパイロットによる制御に機体が依存している。そのため、あくまでもパイロットの技量以上の挙動をすることはなく、かつてアムロ・レイが引き起こした“アクシズ・ショック”のような超常的な現象に発展することはない。
とはいえ「ラフレシア」はカロッゾの脳波が続く限り稼働し続けるため、一般兵がそのターゲットとなってしまったならば、逃げおおせることなど不可能だろう。
■降り注ぐ弾幕は花粉の如し
脳波制御による機動性の高さは言わずもがな、攻撃面に関しても「ラフレシア」らしく、他を寄せ付けない凶悪な武装が搭載されている。
花の柱頭部にあるコックピット周辺には5基の「メガ・ビーム・キャノン」が配備されており、正面方向へ高出力のキャノンを連射して弾幕を張る。5枚の花弁の先端にはそれぞれ一門ずつ「メガ粒子砲」が搭載されており、花弁と砲身の稼働、さらに機体自体の回転もあわせて、全方向に主砲を向けることが可能である。
艦隊やMS部隊を相手にするときに用いられるのが、メガ粒子を広範囲に連射できる8門の「拡散ビーム砲」だ。もはや照準を合わせるまでもなく、回転しながら雨のように砲撃を浴びせるだけで敵部隊を殲滅できるほどの威力を持っている。
そして、花柄の先端部には「4連装ビーム・キャノン」が搭載されており、コックピットの死角から接近してくる敵機への弾幕となる。
高威力の武装を機体全体に配備し、無重力下でその機動力をもって全方向に弾幕を張るというのが「ラフレシア」の戦い方だ。並大抵のMSで「ラフレシア」に会敵してしまったならば、それはもはや攻め手も見つかないまま裸で蜂の巣に突っ込むようなものなのである。