■苦手だからこそ立ち向かった女優としての新境地…『ソラニン』宮﨑あおい
2005年から『週刊ヤングサンデー』(小学館)で連載された、浅野いにおさんの『ソラニン』は、先の見えない将来に不安を抱きながらも、音楽を通じて少しずつ自分たちの生き方を変えていく若者たちの物語だ。
誰しもが社会に感じるあてのない不安、そのなかで必死にもがこうとする青春の輝きが見事にミックスしたストーリーは秀逸で、その高い人気から2010年には実写映画版が放映されることとなった。
実写版にて物語の主要キャラクターである井上芽衣子を演じたのは、『NANA-ナナ-』や『篤姫』といった数々の有名作品に出演している宮﨑あおいさんである。
宮﨑さんはもともと歌自体が苦手だったというが「逃げずにきちんと向き合いたい」という強い思いから、歌が重要なファクターとなる芽衣子役に挑戦。出演にあたり、未経験だったギターをゼロから身につけ、作中ではフルで使われない曲に関しても完璧にマスターするなど、終始ストイックな姿勢を貫いていたという。
そんな宮﨑さんらが終盤で披露する楽曲「ソラニン」は圧巻の迫力。クライマックスシーンであったことから撮影現場は凄まじい緊張感とエネルギーに満たされていたようで、宮﨑さんが汗のせいでピックを落としてしまうハプニングもあったのだとか。
実写映画を手掛けた三木孝浩監督も宮﨑さんの歌唱力を高く評価しており、強さや儚さだけでなく、芽衣子が持つひたむきさのこもった声によって「ソラニン」は本作のクライマックスにふさわしい出来となっていた。
宮﨑さん自身も今作に全力で挑んだことで、心の底からライブシーンを楽しむことができ、やり遂げれたことに大きな成長を感じたと明かしていた。音楽という未知の領域に体当たりで挑み、そのなかで凄まじい伸びしろを見せつけた、まさに名俳優と言えるだろう。
“歌手”や“アイドル”といった役柄は、作中で“歌唱力”を披露する場面も非常に多い。今回紹介した俳優たちは皆、高い演技力だけでなく、身につけた歌やダンス、弾き語りといった演奏技術によって、漫画のキャラクターたちを見事に実写化することに成功していた。