■新一の成長物語が伝わりやすかったテレビアニメ版
2014年10月には『寄生獣 セイの格率』というタイトルでテレビアニメが放送された。テレビアニメ版もストーリーに大幅な改変はなく原作通りの展開。田宮の最期は、前述の映画版と同じく名シーンである。
映画との最大の違いは、「加奈(アニメでは君嶋加奈)」関係のストーリーがかなり丁寧に描かれていること。原作の加奈はスケバン的な風貌の一般の女生徒であるが、あるとき不思議な感応能力に目覚め、人間でありながらパラサイトの放つ信号を感知できるようになる。そしてそれが、物語中盤にパラサイトに殺されてしまう悲劇に繋がる。
彼女は、新一に思いを寄せる第二のヒロイン的なポジションであったが、この加奈の死が、新一をよりいっそう成長させるための重要なファクターとなっている。
テレビアニメでの加奈のキャラデザインは現代に合わせて大胆に変更。スケバンではなく、普通の女子学生のようになり、性格は、少し思い込みの激しいお嬢様という感じになっていた。現代向けの感情移入しやすいキャラになったことで、家族や友人の死を乗り越えていく、新一の成長譚としての物語が伝わりやすくなっていた。
実写映画版、テレビアニメ版と、ストーリーは似ているが、それぞれ異なったアレンジが施されており、どれも評価が高い映像化された『寄生獣』。Netflixの韓国版『寄生獣 -ザ・グレイ-』は果たしてどういった出来栄えになるのか、配信が気になるばかりだ。