2月6日、Netflixの2024年の配信作品ラインナップが一挙に発表され、岩明均さんの漫画『寄生獣』(講談社)をベースにした実写ドラマ『寄生獣 -ザ・グレイ-』の新映像が公開された。
『寄生獣』は、人間の脳に寄生する宇宙から飛来した謎の生物と人間との戦いを描いた物語。ドラマは原作の世界観をベースにした新たな作品になるようで、韓国ゾンビ映画ブームの火付け役となった『新感染 ファイナル・エクスプレス』のヨン・サンホ監督がメガホンをとり、2月23日から公開となる映画『ソウルメイト』でも注目の新星女優チョン・ソニさんが主演を務める。韓国版『寄生獣』がどのような作品になるか注目だろう。
原作は累計発行部数は2400万部を超え、90年代にはNHK BSの批評番組『BSマンガ夜話』に取り上げられるなど、多面的な魅力を持つ。過去には日本でもテレビアニメ化や実写映画化がされてきたが、そのどれもが好評を得ている。改めて、映像化作品がどういったものだったのか振り返っていきたい。
■実写映画版で描かれた日常に迫る恐怖
漫画『寄生獣』は、2014年にテレビアニメと映画が作られている。
映画は『寄生獣』(2014年11月)と『寄生獣 完結編』(2015年4月)の2部構成で、『ゴジラ-1.0』の山崎貴監督がメガホンをとり、染谷将太さんが主人公・泉新一役を務めた。
物語を前後編の2本の映画に収めるため、新一にひそかな思いを寄せる加奈や、新一の父など、名シーンにつながる重要人物が多少カットされているものの、全体的には原作に沿った展開。最新のCGによって日常が変わっていく様子が描かれており、物語冒頭の、ある一家で「パラサイト」に寄生された夫が妻の頭部を食べてしまう「ぱふぁ」「バツン」の一連の動きなどは、まさに漫画『寄生獣』そのままの動きだった。
前編となる映画『寄生獣』では、相棒・ミギーとの出会いや、じわじわと日常に迫り来るパラサイトの恐怖が中心に描かれる。パラサイトに人間が喰われるシーンはグロテスクではあるものの、派手さはない。しかし、だからこそ無機質に人間を食べるパラサイトの怖さが引き立っていた印象だ。
『寄生獣』では敵だけではなく、人間の乗っ取りに失敗してしまったパラサイトが重要なキャラとして登場するが、映画で新一の相棒ともなるパラサイト・ミギーの声を務めたのが阿部サダヲさん。ドラマ『池袋ウエストゲートパーク』『マルモのおきて』『タイガー&ドラゴン』、そして現在放送中の『不適切にもほどがある!』などでもおなじみの、阿部さんらしいコミカルなミギーになっている。さらにミギーの動きも、実は本人の動きによるパフォーマンスキャプチャーを採用。阿部さんが、『寄生獣』の重くて怖い雰囲気を和らげるキーとなっている。
東出昌大さん演じる「島田秀雄」や、浅野忠信さん演じる最大の敵「後藤」など、人気俳優が演じるパラサイトは迫力満点だが、最大の見どころは深津絵里さんが演じた「田宮良子」関係の物語だろう。
前編では、感情のない奇妙な存在で、新一たちではかなわない強敵として登場。しかし、後編では物語が進むにつれてパラサイトである田宮に人間らしい感情が芽生える。そして、最期は自ら生んだ赤ん坊を遺し、無抵抗で人間に殺されていく。おそらく、新一の心を一番かき乱し、視聴者にとっても、『寄生獣』のメッセージ性を一番ダイレクトに感じられるシーンであろう。
映画『寄生獣』は「母親」が重要なテーマとなっており、原作のどこまでも冷たい氷のような田宮とは違う、どこか柔らかいオーラを放つ田宮像は深津さんならではもの。余貴美子さん演じる新一の母とあわせ、「2人の母親」が映画『寄生獣』の重要なキャラクターだ。