SNSや配信サイトの普及により、日本の漫画・アニメなどのポップカルチャーはいつしか世界中にファンを生み出し、老若男女問わず幅広い世代から愛されるようになった。長い歴史を持つ作品も多くあるが、発表当時の「初期設定」を知らずに楽しんでいる子どもたちも、今や多いだろう。
今回は令和の子どもたちが知らなそうな人気漫画・アニメの意外な「初期設定」について、いくつか紹介していこうと思う。
■知るほどに深い歴史を持つ国民的カードゲーム『遊☆戯☆王』
まずは、昨今、希少価値の高いカードに高値がつくことでも注目を集めている大人気カードゲーム『遊☆戯☆王 オフィシャルカードゲーム デュエルモンスターズ』の『遊☆戯☆王』を紹介しよう。
現代の子どもたちは、そもそも本作が漫画を原作としていることすら知らないかもしれない。本作は『週刊少年ジャンプ』(集英社)で高橋和希さんにより1996年から2004年まで連載され、キャラクターグッズとして発売されたカードが爆発的な人気を博し今に至る。しかし漫画の『遊☆戯☆王』自体も、最初はカードゲームを軸とした物語ではなかった。
漫画では当初、心の中に別の人格を宿す気弱な高校生・武藤遊戯がさまざまな敵と多種多様なオリジナルのゲームで戦い、敗者は命にも匹敵するほど重い代償を負うという、一話完結の物語が描かれていた。
漫画の人気が低迷しかけていたころ、物語に登場した架空のカードゲームである「マジック&ウィザーズ」が人気回復の火付け役となり、いつしかカードゲームを軸とした物語にシフトしていったのである。
連載終了後にも多くのシステムが追加され、進化し続ける『遊☆戯☆王』。漫画の意外な「初期設定」はさることながら、カードゲームの歴史だけ見てもジェネレーションギャップが生まれるのではないだろうか。
■時代とともに成長し続ける人気作品『ポケットモンスター』
続いて世代を問わず根強いファンを持つ、アニメ『ポケットモンスター』の「初期設定」を紹介しよう。
2022年に発売されたゲームソフト『Pokemon LEGENDS アルセウス』で描かれたように、『ポケモン』の世界に生きる生物は“人間かポケモンしかいない”とされている。これは、アニメ『ポケットモンスター』の脚本をつとめた首藤剛志さんが『アニメスタイル』のコラム(第209回 病院での映画『ポケモン』第3弾)で明言したものだ。
そうした設定はもちろんアニメでも同様なのだが、放送初期の細かな設定が決まっていなかった時期には、現代の『ポケモン』の世界には存在し得ない虫や魚が描かれていた。
こうした現代の設定とのズレは古い世代のゲームでも確認ができ、ポケモン図鑑の文章には「むし」や「さかな」の表記があったり、「ライチュウ」や「ゴース」の説明には「インドぞうでも きぜつする」などの表記も見られる。
発表当初の想定を超える人気を博したことから徐々に設定が整えられて今の形となったが、現代のポケモンに親しみを持つ子どもたちはポケモンと象が相まみえる設定があったことなど、想像もつかないだろう。