■少女漫画雑誌なのに結婚情報誌ゼクシィと驚きのコラボ!?
集英社『りぼん』では、2020年8月号で結婚情報誌『ゼクシィ』(リクルート発行)とコラボを行った「ミニ婚姻届」の付録が大きな話題となった。このミニ婚姻届は、好きな相手や理想の結婚式などについて記入するだけの"妄想"婚姻届で、実際の婚姻届として使うことはできない。だが『ゼクシィ』が監修しているだけあり、最新の結婚式情報が満載の婚姻届になっており、どんな相手とどんな結婚式をしたいか、婚約指輪の種類はどんなものがいいか、実在の人物を想定して書き込むもよし、好きなキャラを思って書くもよしの、結婚への夢が膨らむアイテムとなっていた。
出版社を越えたこのコラボは、りぼん創刊65周年プロジェクトの一環で、さまざまなクリエーターや企業と組み新しい展開にチャレンジしたもの。2021年4月号では、水沢めぐみさんの『姫ちゃんのリボン』、池野恋さんの『ときめきトゥナイト』などりぼん人気作による「応募者全員大サービス」と銘打った"全プレ"も開催され「りぼんっ子」たちを夢中にさせた。
■昭和時代には漫画家から夢のようなメッセージが
このように、現代の付録を振り返ったが、ずっと以前から付録で読者を喜ばせてきたのが日本の少女漫画。
昭和の時代、その手軽さと安価から雑誌などの付録として「ソノシート」が活躍していた。ソノシートとは、塩化ビニールなどで作られた薄手のやわらかな、いわゆる"レコード"のことである。付録としては主に、アイドルからのメッセージや漫画・アニメ作品のボイスストーリーなどが収録されていたが、なかにはファン感涙と言える物まであった。
例えば、『りぼん』1971年5月号では、一条ゆかりさん、もりたじゅんさん、井出ちかえさんによる「人気まんが家DJ(ディスクジョッキー)レコード」と称した、3人の女性漫画家の声が収録。『なかよし』1980年6月号では、いがらしゆみこさんをはじめ、あさぎり夕さん、原ちえこさん、牧村ジュンさんなど総勢7名に及ぶ「まんが家の先生から声のメッセージ」入りという豪華な仕様である。大好きな漫画を読みながら、レコードプレーヤーを使ってソノシートで聞く漫画家の声に当時の少女たちは歓喜したことだろう。
他にも、少女たちの「漫画家になりたい!」「漫画家みたいな経験をしたい」といった欲求に応えるため、各雑誌では本格的なトレース台、漫画原稿に使うスクリーントーンやデッサン人形など、いわゆる「まんが家セット」の付録は定番で、年を重ねるごとにグレードアップをくり返す傾向にある。
これら付録は人気や流行を取り入れるだけにとどまらず、読者である少女たちでも手軽に「経験」を楽しませる役割を果たしているようだ。