■漫画では『美味しんぼ』が流行し、ジャンプは黄金期に
『不適切にもほどがある!』第1話では、令和にタイムスリップした市郎が喫茶店の『週刊少年ジャンプ』を手に取り「シェイプアップ乱は!?」と掲載作の違いに戸惑ったり(厳密には『シェイプアップ乱』は1985年に連載終了している)、第2話でムッチ先輩が『週刊少年チャンピオン』で連載されたヤンキー漫画『Let’sダチ公』のコミックスを取り出したりと、当時の漫画ネタが散りばめられている。
では、実際にこの頃はどのような漫画が流行していたのだろうか。1986年の流行語大賞新語部門の銅賞は「ファミコン」だったが、金賞は「究極」。これは漫画『美味しんぼ』を出典としたもので、主人公・山岡士郎が完成を目指す「究極のメニュー」から来ている。
当時の『美味しんぼ』の画期的な部分は、漫画作品を、まるでグルメ雑誌のように見せたところであろう。派手なリアクションは廃し、淡々と料理の感想とうんちくを披露するという場面は、まだまだ少年漫画が主流だった時代には衝撃的だったのだ。
一方、この時期の少年誌もすさまじいラインナップだ。『週刊少年ジャンプ』では、1984年に『きまぐれオレンジ☆ロード』『ドラゴンボール』がスタートし、1985年に『シティーハンター』『ついでにとんちんかん』『魁!!男塾』が始まり、1986年1・2合併号で『聖闘士星矢』が連載開始となり黄金期に突入する。
この頃に連載された『キャプテン翼』や『キン肉マン』、『北斗の拳』に『シティーハンター』は、今でも続編や新作映像が作られている、根強い人気を持つ作品ばかりである。『ドラゴンボール』は、いまだにアニメや漫画で続編が作られ続けている。あの当時に生まれた伝説が今も生き続けていることを考えると、改めてすごい時代だと言える。
■ガンダムのターニングポイント
1986年は『ガンダム』にとっても大きな節目となった。1979年に初放送されたテレビアニメ『機動戦士ガンダム』は1981年から劇場版三部作が公開され、1985年3月から約1年間に渡って待望の続編『機動戦士Zガンダム』が放送された。
そして『Z』最終回の翌週、1986年3月1日から『機動戦士ガンダムZZ』がスタート。これまで描かれてきた「一年戦争」からの物語が完結へと向かうことになる。また、見事に子どもに受け入れられた「SDガンダム」が登場したのも1985年後期のガシャポンで生まれた塩ビ人形展開だった。また、1986年にはファミコンソフト『機動戦士Zガンダム ホットスクランブル』も発売されており、このころからマルチメディアで活発に展開し、子どもたちの間で一気にガンダムが広まっていったのがわかる。
振り返ってみると、1985年と1986年で、さまざまな伝説的な作品が生まれた。ゲームでは『スーパーマリオブラザーズ』や『ドラゴンクエスト』が、漫画では『シティーハンター』や『聖闘士星矢』が、おもちゃでは「SDガンダム」が誕生している。
娯楽作品だけでもこれだけの名作が生まれているのだから、1986年は話題に欠くことがない年だったのだろう。『不適切にもほどがある!』を見て、これらの昭和アイテムを再度そろえたくなった人も多いのではないだろうか。