■そして笑顔を忘れずにね『魔女の宅急便』旅立ちのシーン
1989年に公開された『魔女の宅急便』は、魔女見習いの少女のキキが両親から遠く離れた街での一人暮らしを通して本当の魔女へと成長するストーリーだ。
キキは立派な魔女になるため、しきたりに従い、わずか13歳で親元を離れることになる。前日にはひと月延ばすと言っていたのに、天候などを鑑み、翌日急に出発するというキキの申し出に母は驚くものの、自身も13歳のときに自立をした過去もあったことから止めることはしなかった。
母はキキに魔女の伝統である黒い服を着せ、旅立ちのための準備を手伝う。しかし黒い服にがっかりしたキキが、“ほかの色が良かった”と口にしたところ、母は「キキ、そんなに形にこだわらないの。大切なのは心よ」と諭し、「そして いつも笑顔を忘れずにね」とやさしく伝えている。
“形にこだわるな、大切なのは心”という言葉は、現代社会でも通じるものだろう。どれだけ見栄えが良くても、肝心の中身が伴っていなければ何をやるにせよ失敗してしまう。
母は娘に待ち受けるであろう多くの試練を予見し、そんな言葉を掛けたのではないか。自身も13歳で自立し、きっと多くの挫折や失敗を繰り返してきたのだろう。どんなときでも“笑顔さえ忘れなければなんとかなる”という、人生において大切なメッセージを残している。
ジブリ作品は魅力的な料理が出てきたり、やさしいおばあちゃんキャラが出てくることでも有名だが、実は主人公をそっと見守る父母も多々登場している。主人公の多くはやさしく天真爛漫で失敗を恐れない行動力を持っているが、そのように育ってきたのはまぎれもなく親の愛情があるからだろう。
いつの時代も親は子どもに対し、失敗しないようについつい口を出したくなるもの。今回紹介した母親たちのように余計な言葉は言わず、大きな愛情で包み込むような子育てをしていきたいものである。