『となりのトトロ』や『魔女の宅急便』にも…ただただ見守る『スタジオジブリ』作品に登場する“母たち”に学ぶ子育ての画像
© 1988 Studio Ghibli

 子育ては“見守ること”も大事。そんな言葉を聞いたことはないだろうか。『スタジオジブリ』作品に登場する母親たちは子どもにガミガミ言わず、そっと見守るようなシーンも多い。

 筆者も含め親の多くは、子どもが失敗しないようについつい口出しをしてしまうものだろう。しかし子育てにおいては時に口を出さず、子どもの判断に任せたほうがグンと成長することもあるのだ。今回は代表的なジブリ作品から、子どもを優しく見守る母親の印象的なシーンを紹介したい。

■言葉よりも行動で愛情を…娘の髪の毛をブラッシングする母『となりのトトロ』

 1988年に公開された『となりのトトロ』は、よく地上波テレビでも放送される何年たっても色褪せない名作だ。

 主人公の小学生・草壁サツキは、父と妹のメイの3人暮らし。病気で入院中の母親の代わりに家事全般をこなし、妹の面倒も甲斐甲斐しく見ている。

 ある日、サツキ一家は母親のお見舞いに訪れる。喜んだ母はサツキの髪をやさしく触り、ブラシでとかす。少し恥ずかし気にはにかむサツキに対し、“私の子どものころとそっくりね”と言う母。幼いメイよりサツキを優先し、先にとかしてあげるのが印象的だ。

 このシーンについて、宮崎駿監督はこう述べている。“サツキは恥ずかしさもあって母親にすぐに駆け寄れない。そんなサツキに母はどうするか。髪の毛でもとかし、一種のスキンシップを図ろうとするのではないか”と。そして実はこの話は、製作スタッフから聞いたエピソードがもとになっているとのこと。

 母はサツキと離れて暮らしているものの、サツキが普段苦労していることを感じ取っているのだろう。感謝の言葉やねぎらいを伝えるより、まずはサツキに母親の愛情をたっぷり与えてあげたいと思ったのかもしれない。

 抱きしめるといった定番のスキンシップではないものの、ブラシで髪の毛をとかす行為は、思春期に差し掛かった娘への最大の愛情表現であるように思う。

■ごはんのときはちゃんと顔を出しなさい『耳をすませば』

 1995年公開の『耳をすませば』は、中学生の主人公・月島雫の甘酸っぱい初恋や将来の夢に翻弄される姿が描かれている。

 雫は同級生の天沢聖司と最悪な出会い方をしたものの、徐々に彼の生き方や目標に惹かれていく。やがて雫はまっすぐ目標に向かう聖司に触発されるように、“自分の物語を書く”という夢を持つ。

 小説の執筆に夢中になった雫はリビングで食事を取ることも拒否し、執筆に没頭する。しかも受験真っただ中に小説を書き始めたために成績はみるみる下がり、将来を心配する姉と大喧嘩に発展してしまう。

 そんな姉妹のやりとりをなだめ、そっと背中を押してくれたのが雫の父母だ。家族に内緒で小説を書き始めた雫に対し、最初は「なにを試しているの?」と聞く母だったが、父は「雫のしたいようにさせよう」と認める。

 そして父は「人と違う生き方はそれなりにしんどいぞ」と伝え、そのあとの母の「ごはんのときはちゃんと顔を出しなさい」のセリフに対し「そうだ 家族なんだからね」とやさしく諭すのであった。

 一般的には受験勉強もせず部屋にこもってしまう子どもがいたら、姉のように感情的になって叱ってしまう親が多いだろう。しかし雫の父母は何かに夢中になる雫を認めたうえで「家族なんだから食事の時くらいは一緒に過ごそう」という声かけをしている。

 これは“あなたを認めつつも、あなたのことは常に心配しているよ”という親としての真剣なメッセージが伝わってくるシーンだ。

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