『機動戦士ガンダム』『機動戦士Zガンダム』に登場する「カツ・コバヤシ」はファンの間で「嫌いなキャラクター」として名前が挙がることの多い人物だ。感情の起伏が激しく、周りに迷惑をかけても自らの行動を顧みない、見ていて何かイライラする、というような意見がネットでは多く見られる。
今回はそんな不人気キャラであるカツにフォーカスを当ててみたい。そこまで嫌われるようなキャラクターなのか考えていこう。
■孤児としてホワイトベースに避難し、ハヤト夫妻の養子に
まずはカツの人生を振り返ってみよう。『機動戦士ガンダム』初登場時の名前はカツ・ハウィン。サイド7の戦災孤児としてレツ・コファン、キッカ・キタモトとともにホワイトベースに避難した戦災孤児だった。
カツは3人の中では最年長で、ワンパクなレツ、おてんばなキッカに比べて大人しい子どもとして描かれる。最終話ではアムロのア・バオア・クーからの脱出をレツ、キッカととも
に誘導してニュータイプの片鱗を見せる。
そして一年戦争終結後に、ホワイトベースのクルーであったハヤト・コバヤシ、フラウ・ボゥが結婚し、レツ、キッカとともに養子として引き取られ、カツ・コバヤシに改姓した。
一年戦争から7年後、ガンダムシリーズでもトップクラスの不人気キャラと言われているのは、この『機動戦士Zガンダム』に登場する15歳のカツだ。
このときのカツは、感情に任せて突発的に怒り、行動する人物になっている。反抗的でキレやすい、「身勝手な若者」として描かれていると言っても間違いないだろう。敵対組織であるティターンズ所属のサラ・ザビアロフに恋心を抱いてからはさらにその行動が過激になり、捕虜であったサラにだまされて逃亡の手助けをしてしまうなど、周囲への影響を顧みず自分の感情に任せて行動してしまう。
そして、グリプス戦役最終決戦の中で隕石に衝突したところをビームで撃たれ、戦艦の残骸に突入しカツは死亡する。
■アムロとカミーユとの対比
カツというキャラクターを考えていく上で重要なのが、カツが登場する2作の主人公であるアムロ・レイ、カミーユ・ビダンとの対比だ。両者とカツは近いところも多い。だがアムロ、カミーユが嫌いという声はあまり聞かない。カツと何が同じで何が違うのだろうか?
共通点を挙げていくと、アムロ、カミーユ、カツの戦争に参加した年齢は15〜17歳と非常に近い。能力に差はあると考えられるが、3者のいずれもニュータイプであり、3者のいずれも敵陣営のパイロットに惹かれ、目の前でその人物の死を目撃する。
アムロとカミーユも初期はかなり身勝手で未熟なキャラクターだった。アムロはホワイトベースから勝手にガンダムに乗って逃げ出したこともある。カミーユは名前を女みたいだとバカにされたことが原因で軍人に殴りかかった第1話でのエピソードからもわかる通り、非常に衝動的なキャラクターだ。
もちろんカツと2人は全く違い、アムロはホワイトベースにおいてあまりにも1人でやらなくてはならないことが多すぎた。軍人でもない少年には厳しすぎると同情の余地がある。カミーユも家庭環境と高すぎる感受性からくる繊細さを理解することができる。
ただ最大の差は作中、というか戦争を通して成長したかどうかだろう。アムロは中盤以降ニュータイプとして覚醒しエースパイロットとして人間的にも大人になっている。カミーユも数々の出会いと別れを繰り返しニュータイプとしての力を強め、感情的な行動も鳴りを潜めていく。
対してカツはパイロットとしての素質がないわけではないが、2人と比べると成長せず、ワガママなまま死んでいってしまったように見える。
また想い人の死を目撃するという点では2人と同じだが、カツはパプテマス・シロッコをかばおうとしたサラを自らの手で殺してしまう。アムロとシャアとララァに近い構図だが、殺してしまった後が全く違う。アムロは「取り返しのつかないことをしてしまった」と自責の念にとらわれたが、カツはハマーン・カーンに責任を転嫁してしまう。
カツはアムロやカミーユが成長できなかった「もしも」の姿と捉えることもできるだろう。