■富野氏が描く「現代の子供たちにも多い状況」
身勝手で未熟で感情的に行動し、作中で成長の機会が得られなかった。視聴者に好かれない理由がそのあたりにありそうだが、筆者としてはカツはそこまで悪く思えず、ああいう性格になったことにも同情の余地があると考える。
まずカツについてだが、富野由悠季監督は『機動戦士Zガンダム大事典』などのインタビューで、実直なハヤトと優しすぎるフラウという義理の両親のもとで、「自制心」を持たずに成長したと分析している。そして、「現代の子供たちにも多い状況ではないでしょうか」と語っている。
確かにこのように現代(1980年代後半)の問題として捉えることもできるだろう。
筆者としては、ハヤトとフラウにとってアムロがコンプレックスの対象であることが大きかったのではないかと思う。ホワイトベースに乗っているときは、ハヤトはアムロをライバル視し、フラウは明らかにハヤトではなくアムロに想いを寄せていた。物語が進むにつれてアムロとの心の距離が離れていくことに共感したのが結婚のきっかけだったように思える。そんな養父母に育てられ、自分にとってもヒーローだったアムロはニュータイプとして連邦軍から危険視され、実質軟禁状態で鬱屈とした生活を送っていた。
孤児になり戦艦に乗って戦争を体験し、戦争が終わっても上記のような人間関係、政治的な思惑が透けて見えてしまう。そんな世界を見て育ったカツが多少歪んでしまっていても仕方がないのではないだろうか?
カツに関しては筆者も例に漏れず初見時には嫌いなキャラクターだった。言動が幼く感じたし、ワガママなやつだと思っていた。だが近年見返したときには不快感は減っていた。今回書いたようなことを思い、興味深いキャラクターだとすら思えたのだ。
昔はカツのことが嫌いだった人も改めて『Zガンダム』を見てみてはいかがだろうか? 大人になって見返すと、子どもってこんなもんだよね、とかわいく思えるかもしれない。