■キスした相手がまさかの飛び降り『キン肉マン』キン肉マンスーパー・フェニックス
次は、ゆでたまご(原作:嶋田隆司氏、作画:中井義則氏)の超人プロレス漫画『キン肉マン』(集英社)の「キン肉星王位争奪戦」で、キン肉スグルに立ちはだかったキン肉マンスーパー・フェニックス(以下、フェニックス)だ。
キン肉星の王位をめぐる戦いのなか、フェニックスはキン肉マンのガールフレンド、ホルモン・ビビンバに惹かれる。彼女の美貌と心を認めたフェニックスは「わたしは気の強い女は大好きだ」とビビンバに告白し、有無を言わせず唇を奪う。(先ほどのディオといい、ジャンプ黄金期の悪役はキスが好きなのだろうか?)
さらにフェニックスは「自分が王位を継いだらビビンバを妃にする」と宣言。ビビンバも最初はこれを受け入れるが、卑劣な手段で戦うフェニックスと傷つくキン肉マンの姿に耐えられず、ついに高所から身を投げてしまう。「お願いだから 醜い争いは もうやめて…スグルさま フェニックスさま」というモノローグがなんとも痛ましい。
飛び降りたビビンバは一命を取りとめるも、顔が潰れて見る影もなくなってしまう。フェニックスにとっては、惚れた女性が自分のせいで飛び降りるという非常にショッキングな展開のはずだが、彼は「醜くなってしまったビビンバではオレの妻はつとまらん…」と、なんと手のひら返し! 最終回で改心したから良かったものの、拒絶されて当然のヒールである。
むごい所業をくり返す悪役も、傷つく心の持ち主だ。彼らがヒロインに嫌われるのは因果応報なのだが、それでも心に受けたダメージを思うと少しだけ切なくなる。
「あんな奴は拒絶されて当然だ」と断言するか「わかるけどさすがにかわいそう……」と同情するか、あなたはどちらだろうか?