■あまりにも悲惨な最後に絶句…『巨人の星』アームストロング・オズマ

 数多くのスポーツ漫画が軒を連ねるなか、やはり“野球”を題材にした漫画も昔から根強い人気を誇っている。なかでも1966年から『週刊少年マガジン』(講談社)で連載された『巨人の星』は、原作:梶原一騎さん、作画:川崎のぼるさんが手掛けた大人気野球漫画だ。

 いわゆる“スポ根もの”のはしりとも言える作品だが、本作に登場する“ライバル”のなかで悲しき最期を遂げてしまったのが、元アメリカ大リーグ・セントルイス・カージナルスの選手として活躍していた、アームストロング・オズマだろう。

 オズマは野球に勝つことのみを考え生きてきたため、自身のことを“野球ロボット”と称し、主人公・星飛雄馬に対しては自分と似たにおいを感じとったことで激しい敵対心を抱いていた。しかし、飛雄馬の“大リーグボール”に立ち向かっていく過程で考えをあらため、激突を繰り返しながら二人は友情を育んでいく。

 オズマは飛雄馬の“大リーグボール1号”を攻略するも、新たな魔球・“大リーグボール2号”を前に敗北。彼の凄まじい実力を認め、打ち勝つことができぬまま帰米することとなる。

 漫画版ではここまでなのだが、実はアニメ版ではオズマのその後が描かれていた。帰国後、メジャーリーグで目覚ましい活躍を続けていたオズマだったが、ベトナム戦争真っ只中だったこともあり、彼にも召集令状(徴兵カード)が届き、従軍する。

 背中を負傷しつつも戦場から復帰し活躍を続けるオズマだが、試合中、運悪く背中にボールが命中したことで容体が悪化。最終的には生まれ育った街で危篤状態に陥る。そして、彼はかつて戦った飛雄馬の栄光を願いつつ、今まで自分が手にしたものの小ささを嘆き、悲嘆に暮れながら命を落としてしまうのだ。

 主人公が新たな大技を生み出すきっかけとなった重要なキャラクターであるにもかかわらず、そのあまりにも凄惨な最期は当時のファンを騒然とさせたことだろう。

 

 スポーツ漫画には必要不可欠な、主人公と競い合い互いを高め合う“ライバル”たち。彼らの死は作中の登場人物のみならず、作品と向き合う読者たちにも大きな衝撃を与えるものだ。

 死してなおその存在は作品のなかで生き続け、主人公たちの背を強く押し続けてくれることだろう。

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