■どん底の競走馬に感情移入した…『みどりのマキバオー』

 1994年50号から連載スタートしたのが、つの丸さんによる『みどりのマキバオー』だ。競馬をテーマにした漫画の中ではまさに異色の作品で、普通に馬と人間が会話している動物漫画といったほうがいいのだろうか。

 とても競走馬に見えない主人公・ミドリマキバオーが、ネズミのチュウ兵衛など周囲のサポートもあって競走馬として成長していく。感動できるストーリーで、競馬好きの筆者にとっても思い出深い作品だった。

 名馬である母・ミドリコが牧場の借金のカタとして売られていくのだが、母に会いたい一心で牧場を抜け出すマキバオー。困難を経て無事に再会を果たすことができるのだが、現実の世界だと逆に仔馬は成長すると母親から離されてしまうという。競走馬になるためのトレーニングだから仕方ない面もあるが、ついついそのシーンを想像してしまい、感情移入で涙を流したものだ。

 マキバオーのライバル馬にも独自の世界観を取り入れており、最強馬のカスケードや良血馬で兄との劣等感を持っていたアマゴワクチンなど、それぞれが言葉(馬語?)を話すのでより一層感情が入りやすい。

 とはいえ、やはりチュウ兵衛の死が一番堪えたな。おっとりした性格のマキバオーや主戦騎手の山本菅助とは違い、強気でハッキリとモノを言う毒舌家だった。チュウ兵衛のおかげで、マキバオーは競走馬として開花したといっても過言ではないほど。

 しかし、皐月賞での落馬(レースではマキバオーの頭上に乗っている)が影響し、ダービーでカスケードと同着優勝に導いたあと、ここで命を落としてしまう。アニメ版では生き残るのだが、原作のあれには泣けた……。

 あのシーンがあったからこそ菅助が成長し、有馬記念で戦意喪失したマキバオーを叱咤することにつながったのだろう。

 1998年9月号で終了したが、続編は『週刊プレイボーイ』(集英社)で連載されていた。

 

 さて、以降のジャンプは『ONE PIECE』や『HUNTER×HUNTER』、『テニスの王子様』、『遊☆戯☆王』、『NARUTO ーナルトー』などの大ヒット作品が登場し、『ジャンプ』は低迷期から復活していく。

 しかし、ここで紹介した3作品のような陰ながら支えた作品の影響があったからこそ、『ジャンプ』は埋もれずに復活を遂げたと思いたい。

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