■西暦の未来に現れる革新者「イノベイター」

 我々と同じ“西暦”の世界でおよそ300年後の未来を描いた『機動戦士ガンダム00』では、“イノベイター”という存在が登場する。

「GN粒子」という特殊な粒子によって脳の構造が遺伝子レベルで改変された者で、現代の人類の一歩先を行く、まさしく進化した存在であると言えるだろう。

 脳波によって意思疎通をする“ニュータイプ”に対し、“イノベイター”は脳量子波による意識の共有が可能となる。人類史上初めて“イノベイター”として覚醒したのが主人公である刹那・F・セイエイで、劇場版を経た2364年には人類のおよそ4割が“イノベイター”として覚醒しているという。

『00』の世界にはほかにも、人類革新連盟の超人機関にて“超兵”という“強化人間”が育てられていたほか、“イノベイター”を模して人工的に作られた“イノベイド”が登場し、世界の頂点に立とうと目論み、刹那たちと対峙した。

 さまざまな存在が入り混じる『00』。価値観の違う者同士の「対話」の様子が深く描かれており、これが我々の生きる“西暦”の世界線で描かれていることが『00』の面白いところである。

 

『ガンダム』シリーズで描かれる、さまざまな「人間の進化」の様子。どの作品でも世界の命運をかけた激しい戦いへと発展していることから、圧倒的に突出するということの恐ろしさを痛感させられてしまう。

 フィクションとはいえ争いの絶えない人類の様子を見ていると、他者と誤解なく分かり合えるニュータイプだけの世界を作り、争いをなくそうと凶行に出たシャア・アズナブルのエゴを完全に否定できないのは、はたして筆者だけだろうか……。

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