『ガンダム』作品に触れたことがない人でも、“ニュータイプ”という言葉を聞いたことがある人は多いのではないだろうか。普通の人間には成し得ない超人的な能力を持つ存在のことを指すのだが、作品によって“ニュータイプ”とは概念を別とする、異なる超人的な存在が登場する。
今回は『ガンダム』シリーズに登場する、「人間の進化」を現した超人的な存在をそれぞれ紹介していこう。
■人間が持つ可能性を体現した存在「ニュータイプ」
まずは初代『機動戦士ガンダム』と同様の世界線でもっとも長い系譜を持つ、「宇宙世紀」作品に登場する“ニュータイプ”を紹介しよう。
“ニュータイプ”とは、宇宙に生活圏を伸ばした人類が、その極限の環境に適応するために進化し、人間の潜在的な能力が開花した者のことを指す。具体的には、空間認識能力が拡大し特定の人間の存在を感知することができるほか、脳波でテレパシーのように意思疎通を測ることができるようになるというものである。より優れた“ニュータイプ”であれば、故人の思念体とも会話ができるほか、特殊な物質で増幅させた脳波を物理的エネルギーに変換するなど、まさに超人的な能力を使いこなす者たちもいる。
本来、人類全員に潜在的に備わっている力だとされているが、その素質には個人差があるため、人為的に能力を引き出すよう身体を強化された“強化人間”も生み出されていく。常人より優れた能力を発揮できる反面、多くの場合で心身に不調をきたしてしまい、純粋な“ニュータイプ”に比べて見劣りしてしまう描写も散見された。
“ニュータイプ”という超人的なキャラクターがとくに人気を集めがちだが、それに食らいつかんとする“強化人間”や、そのどちらでもない単純な戦闘センスで肉迫する“オールドタイプ”のパイロットなど、さまざまなキャラクターが集うのが「宇宙世紀」シリーズの魅力のひとつではないだろうか。
■人間の飽くなき欲望の果てに生まれた者「コーディネイター」
『SEED』シリーズの舞台である「コズミック・イラ」の世界線では、“コーディネイター”が登場する。
受精卵に遺伝子操作を施し、基礎的な身体能力や学力、長寿命など常人より優れた人間として生まれた者を指す“コーディネイター”。遺伝子操作をせずに生まれた“ナチュラル”からは当然妬まれる存在となり、両者の対立はやがて国家間にまで発展、結果的には大きな戦争の火種となってしまう。
母体によって“コーディネイター”の質にも差が出ることから、母体に変わる装置を用いて多くの胎児で実験を繰り返したのち、遺伝子操作を完璧に実現させた固体が主人公のキラ・ヤマトである。運命的に戦火に身を投じることとなったキラは、初めてMSに搭乗した時から目覚ましい活躍を見せ、最終的にはほぼ無傷で戦場を支配するパイロットへと成長した。
しかし“ナチュラル”のなかにもムウ・ラ・フラガのように、戦闘では“コーディネイター”にも引けを取らない、いわゆるセンスが優れた者もいるため、必ずしも遺伝子操作された“コーディネイター”が至高の存在ではないところが『SEED』という作品で考えさせられるポイントとなる。