『カラオケ行こ!』では綾野剛の苦労話も…キャラたちの「方言」が魅力的だった実写化作品たちの画像
(C)2024『カラオケ行こ!』製作委員会 (C)和山やま/KADOKAWA

 俳優の綾野剛さんの主演映画『カラオケ行こ!』が1月12日より公開となり、24日に都内で行われた公開御礼舞台あいさつで、作中で挑戦した大阪弁の苦労を語ったことが話題となった。

 和山やまさんの漫画を原作とした『カラオケ行こ!』は、組のカラオケ大会で最下位になることを何がなんでも回避したい大阪出身のヤクザ・成田狂児が、中学3年生の合唱部部長・岡聡実にカラオケの特訓をつけてもらうという、立場の違う2人の奇妙な友情を描く物語。『リンダ リンダ リンダ』や『1秒先の彼女』の山下敦弘監督に、『逃げるは恥だが役に立つ』や『アンナチュラル』の野木亜紀子さん脚本というタッグによる映画で、1月12日の公開以来、口コミ効果で興行収入がうなぎ登りのヒット作となっている。

 綾野さん演じる成田は大阪弁を扱うキャラだが、公開御礼舞台あいさつでは「大阪弁の芳醇さ、学んだからこそ分かったニュアンスの多さ、その芳醇さにどんどんひかれていった」と語り、中でも大阪弁の中で特に難しかったのは「(誰々が)おんねん」という言い回しだったそうで、発音が「怨念」のようになってしまったと苦労を明かしていた。

 綾野さんといえばNHK連続テレビ小説『カーネーション』では長崎弁を駆使するなど、方言による演技もお手のもののようだが、やはりその裏には意外な苦労が隠されているようだ。

■菅田将暉の広島弁に夏帆の石見弁も

 漫画を原作とした実写化作品では、作中のキャラにあわせて方言を使う場面は多い。綾野さんが『カラオケ行こ!』で演じた大阪弁のほかにも、キャラたちの方言が魅力的だった実写化作品が多くある。

 ジョージ朝倉氏の漫画を原作とした、2016年公開の映画『溺れるナイフ』での広島弁もそうだろう。同作は、のちに私生活で夫婦となる菅田将暉さんと小松菜奈さんの共演が瑞々しい青春ドラマだ。

『溺れるナイフ』は「東京から遠く離れた田舎町」を舞台にしており、具体的な地方は明言されておらず、架空の土地とされている。その中で菅田が演じた地方の少年・長谷川航一朗(コウ)は、広島弁をベースにして周囲の方言を足したような独特の方言で喋っている。

「ほうじゃのお」「じゃけえ」などの広島弁のような口調はやんちゃで生意気な少年らしさをまとっていながらも、どこかアンニュイな魅力を放っている。

 菅田さんは漫画原作の実写化でこそないが、このほかにも北海道を舞台にした『そこのみにて光り輝く』や愛媛を舞台にした『ディストラクション・ベイビーズ』など地方を舞台にした作品で方言を披露することが多い。

 続いては2012年に実写ドラマとして放送された『名探偵コナン』の実写ドラマシリーズ4作目『工藤新一 京都新撰組殺人事件』(日本テレビ系)に服部平次役で出演した松坂桃李さんの演技を紹介したい。

 2006年からキャストを変えながらテレビ放送されていたシリーズだったが、平次の実写化はこの作品が初めてだった。

 神奈川出身の松坂さんは関西弁で喋る平次役に「関西弁をどうにかしないと…」と方言に苦戦したことを明かした。インタビューでは「台本が上がってから、方言指導の方のCDを繰り返し聴いたり、大阪出身の人と話したりしました」と努力を語っている。その甲斐あってか、苦労を微塵も感じさせない流暢な関西弁での推理はあまりに自然だった。

 また『カラオケ行こ!』の山下監督が手がけた、くらもちふさこさんの同名漫画を原作とした2007年の映画『天然コケッコー』では、島根県浜田市周辺の方言が用いられている。

 主人公・右田そよ役を務めた夏帆さんのは東京出身だが、一人称を「わし」、語尾を「じゃけえ」という石見弁での演技に挑戦し、日本アカデミー賞新人俳優賞をはじめ、ヨコハマ映画や報知映画賞などで新人賞を受賞。映画単独主演初作品ながら、圧倒的な演技力を見せた夏帆さんに驚いた映画ファン、原作ファンは多かったのではないだろうか。

 その他、竜星涼さんが田舎暮らしの朴訥とした方言男子を演じた2020年公開の、BLコミックを原作にした映画『リスタートはただいまのあとで』など、意外な俳優の方言演技が見られる作品は貴重なものばかり。方言でしゃべる役を魅力的に演じるための俳優の努力は計り知れないものだろう。原作を尊重して再現してくれる姿にも心ときめいてしまう。

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