■罵倒しながらも最期は…『ジョジョの奇妙な冒険』虹村形兆
最後は、荒木飛呂彦氏の『ジョジョの奇妙な冒険』から、虹村形兆を紹介する。
形兆は、第4部『ダイヤモンドは砕けない』に登場した序盤の黒幕的存在だ。不死の化け物になってしまった父親を殺せるスタンド使いを生み出すため、弓と矢を使いスタンド使いを量産し続けていた。
そんな状況での苛立ちやプレッシャーもあったのだろう……実弟である億泰のことをいつも蔑み嘆いていた。自身のスタンド“バッド・カンパニー”で億泰を誤射した際も「おまえの“ザ・ハンド”は恐ろしいスタンドだが…おまえは無能だ!」と罵倒している。
そんな厳しい形兆だが、最期は「億泰…おめ…はよおーいつだっておれの足手まといだったぜ…」と憎まれ口を叩きつつ、“レッド・ホット・チリ・ペッパー”に襲われる億泰をかばい死亡する。
形兆はその後、吉良吉影との最終決戦にて、“キラークイーン”の爆弾能力により吹き飛ばされ死の淵をさまよう億泰の夢の中に再び現れる。形兆の「どこへ行く」という問いに対して、「杜王町に行く」と答える億泰。その直後、億泰は意識が戻り、戦線に復帰することができた。
そのときの形兆の姿が本物の彼の魂だったのか、それとも億泰が作り出したイメージだったのか分からないが、いずれにせよ億泰が死の際でもっとも頼ったのは兄・形兆だったことは間違いないだろう。
今回は、あえて憎まれ役になりながら最期は弟を守って散った兄キャラたちを紹介してきた。いずれも手のかかる弟になにかと苦労の多い兄たちだったが、少し愛情表現で不器用な点も共通しているように感じる。
それぞれ精一杯の愛を弟に伝え、最期は儚く散っていく彼らの姿はいずれも作中屈指の名シーンを生み出し、読者をより作品に引きこんでいた。